2012年2月25日土曜日

高知で自然農業の勉強会がありました





 2月21日、22日に高知県香美市の保健福祉センターで協同組合韮生(にろう)の里主催栽培講習会で、事務局姫野が講師の自然農業の勉強会がありました。企画したのは、香美市の会員日高敦子さんです。ご主人と基本講習会に参加され、自給野菜を栽培し、この直売所にも出荷しています。毎年開かれる栽培勉強会に「今年はぜひ自然農業を」と提案し実現したものです。



 この日参加したのは、農産物直売所に協同出荷している農家の方たちで約80名でした。


 21日は最初に高知県中央東農業新興センターの普及員渡邊晃充氏による有機農業の話があり、土作りの具体的な方法について人参を例に話されました。


 姫野は自然農業の基本的な考え方について話し、パワーーポイントで土着微生物や天恵緑汁の作り方等を紹介しました。


 22日は土着微生物、天恵緑汁、漢方栄養剤、水溶性カルシウム、乳酸菌などの作りかたの講習会を行い、15名ほど参加がありました。





 香美市は漫画家のやなせたかし氏の故郷で、アンパンマンミュージアムがあり、町のあちこちにアンパンマンのキャラクターをあしらった街灯や掲示板などがありました。勉強会の会場も舞台の緞帳はやなせたかし氏のイラストがデザインされたものでした。


 写真はミュージアムの倉庫の壁です。






 日高さんのお子さんが通う小学校は校舎が新しく、木を生かす建築という事で温かみの感じられる校舎でしたが、その中の壁にもアンパンマンの絵がかかれていました。

熊本宇城市で自然農業セミナー

豊野少年自然の家で開催





 2月13日、14日に渡って、熊本県宇城市豊野少年自然の家で、趙漢珪先生、趙珠榮先生による自然農業のセミナーが開催されました。今回のセミナーは日本自然農業協会と地元の宇城市有機農業推進協議会との共催でした。宇城市の澤村輝彦氏がこの団体に所属し、提案して実施されました。
 趙先生の講演会では普通3時間くらいの話になりますが、それでは自然農業の真髄にふれることはできないという事で、じっくり話聞くために1泊2日で企画されました。





 企画が良かったのか、時期的にも参加しやすかったのか、参加者は70名ありました。趙先生を呼んでの企画としては久しぶりに黒字でした。(いつもトントンか少し赤字になる場合もあります)協議会が講演料を負担してくださったので、協会はその他の経費負担だけですんだこともあります。


 セミナーの内容は「自然農業の基本的考え方」「土着微生物」「栄養週期の基本」「栄養週期に基づいた肥培管理」「自家製資材」でした。


 一昨年、脳梗塞で倒れてからかなり回復された趙漢珪先生は、以前のように熱のこもった講義を、ときおりユーモアを交えながらしてくださいました。


 娘さんの趙珠榮先生も、後継者として一生懸命勉強されて、お話もとても分かりやすくしてくれます。趙珠榮さんの講義のときは姫野が通訳します。今回は土着微生物、土壌の健康について、天恵緑汁など自家製資材の意味や作り方、使い方について話してくださいました。














 セミナーの後は、自然農業の実践ほ場見学ということで出かけました。まず訪問したのは、松橋町の作本弘美さん宅です。まず、土着微生物のぼかし肥について説明してくださり、その後セロリとアスパラのハウスを見学しました。
















 次に訪ねたのは、不知火町の澤村輝彦さん宅です。土着微生物のボカシ肥を作っている倉庫に行くと、真っ白に菌がひろがった山がありました。きれいに土着微生物が繁殖していました。















次はのスナップエンドウのハウスです。広さにびっくりすると共に、実がびっしりついているのにもびっくりしました。収穫が大変だろうという声があがりましたが、やはり雇用して行っているそうです。これからさらに収量は増えていくそうです。


次にトマトのハウスを見学しました。以前は畝にマルチをびっしりしていましたが、趙先生の指導を受けて、半透明のビニールにし、下には稲ワラが敷いてあります。






「ビニールが土に直接だと、水滴がつくし、通気が悪いようです。こういう風にしてから連作生涯など病気はありません」と澤村さん。

2011年12月12日月曜日

第17回総会・全国大会で見学会がありました

趙漢珪先生が畑で指導

 総会の翌日、地元の内田美津江さんの畑を皆で見学しました。内田さんは長年一緒に農業をやってこられたお父様を亡くし、現在はご主人と二人で農作業を行っています。最近息子さんが手伝ってくれるようになったそうですが、たくさんの種類の野菜をやっているので、忙しくて大変です。











 まずは土着微生物を入れたボカシ肥です。趙先生が「少し臭いがするので問題がある」と指摘しました。発酵が順調ではないようです。材料の問題か、切り替えしの問題かもしれません。



















 生姜の畑へ行くと葉っぱが真っ白に染まっていました。これは最近石灰をまいたからだそうです。趙先生が「なぜ石灰をまいたのですか」と尋ねると、「この時期にいつも親父さんがまいていたからです」と内田さんが答えました。「収穫前のこの時期は、熟期促進の処理をしなければなりません」と指摘しました。














 人参の畑では、何本か抜いてみてみました。「この時期では、ちょっと葉っぱの色が濃いようです。」と指摘しました。「この人参も仕上げの熟期促進処理をすれば、糖度もあがって味がよくなりますよ」とのこと。内田さんが一生懸命メモをとりながら「もう一度栄養週期から勉強しなきゃいけませんね。」と言ってました。



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 これは生姜の保管をするために掘った穴です。今まではお父さんが機械で直接掘っていたそうですが、今年は人に頼んで掘ってもらったそうです。







 ここに長期保存のものと、少しずつ取り出すものと区別して保管します。生姜はこの保管方法が大事です。温度と湿度管理がうまくいかないと腐らせてしまいます。長年の知恵があるようです。



 他に、サトイモ、ネギ、キャベツ、豆など多彩な野菜畑を見学しました。野菜をセットで宅配もしているので、色々な野菜を作るのでしょう。消費者は喜ぶでしょうが、管理が大変だなと思いました。



 見学が終わった後、お昼ご飯は内田さんがお弁当を作ってくださいました。野菜はほとんど内田さんの畑で出来たものです。お米も陸稲で作っているそうですが、水稲に劣らずとてもおいしかったです。熱い豚汁も用意され、いたれりつくせりの歓迎に一同感謝です。趙先生、奥さん、娘さんも喜んでいました。


 内田さんは、これから放射能汚染の問題にも立ち向かっていかなくてはなりません。土作りがよくできた畑では、団粒構造になって放射能を包み込む働きがあるという研究を発表した方もいるそうです。これまでしてきたことが決して無駄ぬはならないことは確かです。土着微生物の働きも期待できると思います。皆で知恵を寄せ合って頑張っていきましょう。

2011年11月17日木曜日

韓国の自然農業を視察 6

加工、流通、食堂まで経営、自然養豚





 最後に訪ねたのは全羅南道の西海岸にある務安(ムーアン)市の姜大容(カン・デヨン)氏の豚舎です。入り口には親環境農業認証の看板がありました。日本のJAS認証ではまだ畜産はありませんが、韓国ではもうあります。ここはエサに抗生物質を使っていないということで認証を受けています。




 カン・デヨンさんは42歳と若くてエネルギッシュです。現在豚の飼育頭数は母豚12頭と少ないのですが、仲間の自然養豚農家と組んで、肉の加工、流通、食堂まで経営しています。インターネット販売を始めて、現在寝る間もないくらいだそうです。


エサは以前自家配合していましたが、現在は忙しくてそこまで手がまわらないそうです。
「自然養豚」 の技術をなんとか残したいという思いでやっているそうです。


 豚舎の臭いがないのでドイツ人見学者の方々はまた驚いていました。発酵床のすごさです。




 分娩房では周囲に鉄棒を渡していました。これで母豚が寝るときの子豚の圧死がほとんどないそうです。

 これが、肉屋さん。一般の小売とネットできた注文の宅配も行います。


















 隣がカン・デヨンさんの奥さんがやっている食堂です。私は一人釜山へ向かわなければならないので、時間の関係で残念ながらここで食べることができませんでした。次回はぜひ食べてみたいです。

2011年11月16日水曜日

韓国の自然農業視察 5

 さらに広がる谷城郡の自然 農業





 このブログでも何度か紹介しましたが、全羅南道の谷城郡では郡をあげて自然農業に取り組んでいます。その中心は農業技術センターです。ここに自然農業の実習室があり、土着微生物や天恵緑汁、漢方栄養剤など自然農業の資材作りの実習をしますし、出来た資材の保管もし、農家が必要なときに必要な量を取りに来ることも出来ます。また、私たちのような見学者を受け入れているので、自然農業で使用するあらゆる資材がいつも展示されている場所でもあります。







「自然農業資材 実習場」の看板




 ここで自然農業チーム長の趙京勲(チョー・ギョンフン)氏が谷城郡での取り組みについて話してくれました。








 「私が自然農業を取り組むようになったのは近くの固城郡での稲作を見て驚いたからです。確認するために私は22回固城郡へ通いました。そして確信したのです。」現在ではその固城郡よりもここ谷城郡の方が熱心に取り組んでいるようで、年々自然農業による栽培面積は拡大していっています。


 例えば、稲作は2009年には23㏊だったのが、2010年には50㏊、2011年は70㏊、来年度は200㏊に増える予定です。作物も米だけでなく、メロン、サンチュ、ニラ、イチゴ、リンゴ、ウメ、ナシと増えていっています。さらに豚、鶏、牛と畜産への取り組みも始まっています。 上の写真は趙チーム長が今年収穫した稲のほ場の中で、301粒あった穂について説明しているところです。一般的には80~110粒。自然農業では平均180~200粒あったそうです。











 趙チーム長は谷城郡が自然農業に取り組む必要性について以下のように話してくれました。



1 地域の資材が農業で活用されること。 2 低費用高効率で農家の自立能力を養うこと。 3 政府依存から脱却すること。 4 病害虫のない高品質で安全な農産物を生産すること。


 これらを達成するために技術センターとして、 自然農業の基本講習会、専門講習会を支援、資材製造を共同で行っているとのことです。


 最近では学術的な研究が進んでおり、韓国の有名な化粧品会社アモレが谷城郡のリンゴやナシの成分について詳しく調べているそうです。残念ながらその資料を手にすることが出来ません。この写真はナシの保存期間が長いことを説明しているものです。上の写真は韓国のSBSテレビで紹介された日本の「奇跡のリンゴ」。保存期間が長いと比べていますが、自然農業でも同じような現象が起こっているというわけです。左側が慣行農法のナシで、右側が自然農業のナシです。左の写真から順に2010年2月8日、3月3日、3月25日、4月7日です。慣行農法のナシは真っ黒になって腐っていていますが、自然農業のナシは少しずつ形が悪くなっていっているだけで、その差は歴然としています。これが自然農業の特徴でしょう。生命力の強さ。すばらしいですね。


 この後、見学者も資材作りの実習をしました。これは観賞用のリンゴ(ヒメリンゴ)を刻んだり、つぶしたりして黒砂糖をまぶして果実酵素をつくっているところです。








  外では水溶性カルシウムを作るためにカキガラを焼いていました。




 カキガラはそのままでは溶けにくいので焼きます。バーベキューのような要領です。表面が白くなるまで約2時間くらい焼くそうです。




 これをカメかビンに入れて玄米酢を入れます。この時注意するのは、カメの口までいっぱいいっぱいに玄米酢を入れないこと。反応して噴き出してしまいます。





 ドイツからの見学者を歓迎する横断幕まで準備されていました。ドイツ語で書かれた歓迎の言葉に一同感激です。








韓国の自然農業を視察 4

 自家配合のエサで自然養鶏10年 








 次に訪ねたのは順天市で養鶏をしている金桂洙(キム・ケース)氏です。私は順天農協は何度も訪ねていますが、キム・ケースさんのお宅は初めてでした。養鶏場は順天市のはずれ、少し高い所でした。










 キム・ケースさんは高校で社会科の教師をしていましたが、やめて11年、自然農業を始めて10年になります。現在鶏は1500羽。飼育は一人でやり、卵の箱詰め、発送などは手伝いの人を雇っています。










 鶏舎に来て、ドイツ人の人たちは皆、臭いのないことや鶏が静かな事に驚いていました。ドイツからのお客さんは農家の人は少なかったのですが、中に畜産関係の人や、教会の関係でこれから共同体として畜産を含む農業を始めようとしていて、関心が高かったようです。













 鶏舎の前にサツマイモのツルと葉が積んでありました。いもの収穫と一緒に持ってきて乾かしているようです。これといもをエサの中に15~20%入れるそうです。エサには赤土も入れるという事でそばに積んでありました。










 冬期用に葉を切ってそのままビニールの袋に入れてサイレージを作っていました。「一緒に米ヌカも入れるといいんですが、なしでも充分発酵します」冬場は青草類が足りないときは、大根やカボチャを使用するそうです。




 卵は一個500ウォン、一般の卵の倍以上で販売します。販売はすべて直接配達しているそうです。


 最後にキムさんに何か問題点がありますかと訪ねたら「この十年間旅行に一回も行けていないことです」と言ってました。でもうれしそうに話していましたから、その代わり生活は安定しているということでしょう。

韓国の自然農業を視察 3

自然農業14年 楽園のようなカキ園





 次に訪ねたのは全羅南道潭陽(タミャン)の羅相采(ラ・サンチェ)氏のカキ園です。ここは昨年の果樹・一般作物専門講習会のときにも見学ツアーで訪れた所で、最も印象深かった農場として記憶している所でした。忠清南道の瑞山からはかなり南へ下った所なので、訪ねたときはすでに5時を過ぎて薄暗かったのが残念でした。













 まず、山あいに広々と広がるカキ園に風景に心を奪われてしまいます。カキ園の下は緑の芝生に覆われています。ここへくるといっぺんで心が解放されたような気分になります。見下ろせば、遥か遠くまで町が見渡せます。ここへ来て過ごして、ここのカキを食べて病気が治ったという話にも頷けます。



 
































さっそく収穫されたカキをいただきながら、後継者として一緒に仕事をしている息子さんの説明を聞きました。カキは収穫にはまだ一週間くらい早いそうですが、とてもおいしかったです。





 ラ・サンチェさんは若い頃都会に出て仕事をしましたが、故郷に帰って農業を継ごうと思ったとき、自分の理想郷を目指して有機農業に取り組みました。無農薬栽培は1年目は良い成績でした。二年目もまずます、ところが三年目に入ったときには病虫害にやられて収量は70%減ーつまり3割しかありませんでした。


 そうしていたら趙漢珪先生との出会いがあり、自然農業を始めました。そして14年。「現在は完全な自然農業とは言えないかもしれませんが、ある程度の所まで来ました。農薬は石灰硫黄合剤と殺虫目的で薬草液を散布しています」とのことです。薬草液とはヤマゴボウの根、イチョウの葉、ニンニクを焼酎に漬けて抽出した液です。ヤマゴボウ(韓国名チャリゴン)は以前、FAXネット通信でも紹介したことのある植物農薬です。







  販売先はハンサルリムという消費者意識の高いことで有名な生協です。消費者との交流も行っています。ここへはまるでピクニックにでも来るような感じで遊びに来るそうです。居心地が良くて泊まっていく人もいるとか。










 父親の目指した理想郷をこの息子さんが引き継いで、さらに発展させてほしいと思いました。




 これは韓国の国が認定する親環境農産物の認証農場の看板です。それに自然農業協会の認証もあわせて書かれています。




 趙先生の横で笑っているのは、一緒に同行した韓国の大学生で、現在ニューヨーク大学で勉強中。今回は自然農業をテーマに論文を書くという事で現場の取材を行っていました。