2009年1月30日金曜日

カキの剪定講習で韓国へ行ってきました



 1月13日~15日、カキの剪定講習会で韓国へ行ってきました。今回は自然農業の関係ではありませんが、韓国の自然農業協会の会員でもある密陽の甘柿農家李世榮氏を通して通訳の依頼があり、福岡県杷木市の小ノ上喜三(おのうえ よしみつ)氏による講演と剪定実習を行うというものでした。主催は慶尚南道農業技術院で本部は晋州(チンジュ)にあります。今回はその管轄内の宜寧(ウィリョン)、金海(キメ)、密陽(ミリャン)の三ヶ所を三日間で回りました。



 空港で出迎えたのは、今回渡韓する前に何度も連絡を取り合った農業技術院の職員鄭容仁さんです。彼は日本の千葉県の農業試験所にいたこともあり、かなり日本語も出来、日本の農業事情にも詳しい方でした。晋州の本部にまず案内され、甘柿専門で農学博士の黄甲春(ファン カプチュン)氏から管内の状況についてお話しをうかがいました。 上の写真は農業技術院の玄関前で小ノ上さんと鄭さんです。


 その話によると、韓国の甘柿の生産地はほとんどこの慶尚南道に集中していますが、平均気温は14度という事です。福岡では15~16度だそうですから、無霜期間も日本より一ヶ月も短い韓国は、そういう意味で栽培条件は日本に比べ悪いという事になります。但し、年間降雨量が少ないので、日本よりも病気の心配が少なく、農薬の散布回数が少なくてすむようです。因みに小ノ上さんは平均10回かけるそうですが、この地域では平均8回だそうです。また夏から秋にかけての昼夜の温度差が大きいので、味を乗せるには有利なようです。















 小ノ上さんは雑誌「現代農業」にもなんども寄稿していますが、多収穫を実現する技術をもっています。反収3トン採り、と呼ばれています。その為には小ノ上さんは大事な事として五つの事をあげています。



1適正剪定
2早期摘蕾
3適正着果
4降雨量
5肥料





 中でも徒長枝の活用が大きな特徴です。普通は徒長枝を切ってしまいますが、小ノ上さんは残して結果枝にします。すると二年目で10個、三年目で23~24個、四年目では45~46個にもなります。5年で切り替えます。今までほとんど成らしていなかった中心部分からも収穫するわけですから収量がアップするわけです。小ノ上さんは「今まで1トン採っていた人が2トンとるのは簡単、でも2トン採っていた人でも2.5トンや3トンを採ることも可能」と言います。

 講演ではその様な話を黒板に図を書きながら、小ノ上さんは具体的に数字で表していきます。初めて聞く韓国の農家の人たちは、最初ふしぎな顔をして聞いていましたが、話を聞くにつれてだんだん興味がわいてきたようです。中には今までと全然違う考え方に抵抗を覚えるらしく、首をふりながら納得できないという風な顔の人もいます。

 しかし、現場で小ノ上さんが自ら剪定ばさみと鋸で枝を切りながら説明を始めると、やっと話の内容が伝わったようです。それでも小ノ上さんが「これは無駄な枝」「これは使えない」とどんどん切り落としていくので、実習場になった園主の人は少し不安な顔です。しかし、小ノ上さんが切り落とした枝を取り上げて、昨年着いた実の数を数えて「こんなに大きな枝だけど、25個しか採ってない。それよりこっちの徒長枝に成らせれば、これ一本で50個は採れる」と説明すると、納得した様子。これまでこんなに緻密に数えて確認したことがないようです。



 私も通訳をしながら、多収穫のためには剪定だけでなく、摘蕾のときに葉果比を考えて作業をしなければならない事など、他にもたくさんの事を学びました。