2009年3月31日火曜日

ブラジルへ行ってきました(2)



アマゾンの自然養豚


 ご覧のように、こちらで建てた豚舎は自然農業の基本の形式とは違っています。 一つの村で7ヵ所、もう一つの村で繁殖用の豚舎を見ましたが、様々です。

  自然養豚に取り組むには、基本講習会の受講が前提ですが、それが出来なかったので、良い豚舎の環境作りについて話をしました。



















 (1)太陽光線  一年中暑い所ですから、どうしても屋根で大きく覆ってしまいます。自然農業では天窓があるので、一日を通して太陽光線が隅から隅まで動き、太陽光線の当たらない所がないように出来ています。それは太陽光線に勝る消毒はないからです。


  また、陰と陽の割り合いが7:3に保つのが、微生物の環境にとっても大事であり、豚にとっても、陽の当たる所や日陰の、好きな場所で過ごす事が出来るので良いのです。

 こちらでは住居と同じブスー椰子で屋根を葺いていますが、ひさしが長すぎる所は、陽が入るようにした方が良いと言いました。










(2)換気  豚にとっても、微生物にとっても最も大事な換気に関してはほぼ問題ないと思いました。天窓はなくても、小屋が小さい上に、この地域は川風が常に吹き渡っているからです。

(3)発酵床  自然農業の最大の特徴である発酵床は、今のところ問題ないように思いました。基本通り「オガクズ10:土1、それに自然塩0.3%」の配合できちんと準備して作りました。

 しかし、この地域は水が浸水してくる地域なので、その影響がどう出るか、今後の観察が大事です。この地域で豚舎を作るに当たって、自然農業の基本である「土と縁を切ってはいけない」という事と、排水の問題をどうしたらいいか迷いました。結局、この地域に昔からある「マロンバ」と言って、浸水してきたときに豚など家畜が非難する板で囲って土でかためたものを土台に利用するという事にしました。つまりマロンバの上に発酵床の豚舎を建てたわけです。

 雨期を経験して、この発酵床がどうなるか。また、豚が出荷する程大きくなったときに、この小さな豚舎で、発酵はうまく行くのか。心配な点はあります。

(4)水  今までは放し飼いだったので、豚は適当に自分が選んで飲んでいましたが、舎飼いにしたので、毎日きれいな水を用意してやらなければいけません。その辺のところが、まだ徹底して行われていないようでした。水の器にえさや青草が入って、水が濁っている所もありました。




 しかし、豚舎によっては、基本通り、エサ箱と水飲み場を離して設置し、豚が運動するようになっていました。








(5)エサ  「自然農業の豚舎にすると、床が発酵してエサに変わる」という部分が、かなり大げさに伝わったようで、青草類が豚舎全面に投げ込まれ、それを豚が踏みつけて床面がきたなくなっている所もありました。

 また、今まで放し飼いだったので、毎日きちんとエサをやって太らせるという感覚がなじんでいないのか、充分にエサをやっていない所もありました。日本では、エサのやり過ぎはいけないという事で、えさは一日一回です。「一回満腹一回空腹」の原則と言って、不断給餌ではなく、胃腸を休ませる事の重要性を言います。しかし、こちらでは空腹は充分なので「満腹にさせる事」が大事なのです。


 こちらでは食品残滓などはありません。しかし、アマゾンの森には様々な果実がありますし、バナナの葉や茎も利用できます。また、川にはホテイアオイが繁茂しており、エサの材料には事欠きません。
 写真の黄色い機械は、果実や種を砕く破砕機です。



 飼料用のトウモロコシの栽培を行っている人もいました。また、川の水が浸水してきたときに大量の魚がくぼ地に溜まり、水が引いて、そのまま干上がる事があるそうです。それらを干して魚粉にすれば、年間を通してタンパク質の材料になると思います。



 また、天恵緑汁の材料は何がいいのか、定まっていませんが、「生長の早いものの成長点」や「豆科の葉」「果実」などで充分出きると思います。

 当日は、上記の条件を言って、何かの葉が集めてありましたので、それを利用して天恵緑汁の作り方の実習を行いました。こちらでは黒砂糖は白砂糖の3倍以上するという事で高いので、白砂糖(と言っても、三温糖のような感じの砂糖)で仕込みました。



 また、バナナの茎を刻んで、小麦のフスマ(米ヌカが手に入りにくいので)と土着微生物の元種と天恵緑汁を混ぜて仕込みました。

2009年3月30日月曜日

ブラジルへ行ってきました(1)

 3月2日より15日、ブラジルへ行ってきました。 

今回の訪問の第一の目的は、昨年研修生の受け入れを行ったJICAのプロジェクトの関連で、アマパ州アマゾン川流域における自然養豚の指導です。
 JICAのプロジェクトの本来の目的はアマゾンの森を守り、川岸住民の生活を向上させる事ですが、その森林の畑に放し飼いの豚が侵入してくるので、囲い込む必要が生じ、アマゾンの自然を守る養豚法として自然養豚が導入されることになったのです。

 写真のように、この辺では、豚は家の周辺を適当に歩き回っているのが一般的です。一生懸命掘っているのは、ミミズを食べるためです。











 この地域は海から500km.以上入ったアマゾン川の支流沿いですが、潮の満ち引きの影響で、一日に二回浸水します。また一年を通しても雨期と乾期がある地域なので、写真にように住居は高床式です。
 昨年の研修生として来日したのは、州政府が派遣した、日本で言えば農業改良普及所の所長及び部長にあたる人たちで、日本に来る前は、「糞取りをしないで、さらに発酵床がエサに変わる」と聞き、信じなかったそうです。ところが、日本に来て実際に自然養豚の豚舎を見て驚いたそうです。帰国後さっそく村の人達を集めて講習会を何度か開き、豚舎が建てられました。今回は子豚が導入されたので、見に来て欲しいという事で行くことになりました。本当は趙先生を案内したかったのですが、出来ませんでした。

 アマゾン川は想像以上に広く、海のようでした。いつも川風が吹き渡っているので、常夏と言っても、とても過ごしやすかったです。












船で各家を回りました。案内してくださったのは、JICAのアグロフォレストリー専門家である高松寿彦氏で、同行したのはアマパ州森林院長、州農業改良普及所技術者など7名です。










 写真は、その時の船です。桟橋に干してあるのはミリチ椰子で、殻が固いので特別な粉砕機で細かくして、豚のエサにします。


これは、さらに支流に入ったときに載った船外機付きボートです。これはJICAの持ち物です。スピード抜群で、揺れもなく、乗り心地は良かったです。








なんと言っても、ここアマゾンでは船が重要な交通手段です。

子ども達も小さな船を上手に操っています。日本で言えば自転車感覚です。学校もスクールバスではなく、専用の船が送り迎えします。

小さな豚舎に子豚が2~4匹入っていました。定期的に川の増水があるので、住居と同じ高床式です。そこに発酵床を作ったのです。






 エサは周囲にある果実や種、バナナの葉や茎などです。色々問題はありましたが、とりあえず発酵床は臭いもなく順調でした。
 バナナの茎や葉は、そのままだと豚はあまり食べませんが、発酵飼料にするとよく食べるようになります。写真はその実習の様子です。