2009年4月29日水曜日

田主丸で資材作りの講習会がありました

 4月24日、久留米市の田主丸自然農業研究会で資材作りの講習会が開かれ、姫野が講師で行ってきました。





 まず、天恵緑汁の仕込みです。準備された、ヨモギ、クレソン、タケノコで仕込みました。黒砂糖が25㎏なので、カメの大きさ等も考え、ヨモギは5㎏、クレソンは5㎏、タケノコは15㎏仕込みました。黒砂糖は以前、材料の重量の三分の二が基準でしたが、現在では同量使用します。

 次は漢方栄養剤の仕込みです。事前にビールでふやかし、黒砂糖で発酵させた当帰、甘草、桂皮及び、ニンニク、生姜に焼酎(35度のホワイトリカー)を注ぎました。

 次は水溶性カルシウムの仕込みです。有精卵の殻を細かく砕いて、フライパンで炒ったものを準備し、玄米酢の投入しました。そうすると卵の殻が玄米酢の中で上に上がったり、下がったり反応を始めます。だんだんぶくぶくと泡が沸いてきます。去年仕込んだものも展示されましたが、殻がもうほとんど無くなって下の方に残っている程度です。


 田主丸自然農業研究会は昨年の趙漢珪先生の講演会をきっかけに設立され、池尻和守さんが会長です。講習会の後、池尻さんの巨峰ハウスは訪ねました。すると、写真のようにりっぱな巨峰が実を実らせていました。その中で仕込まれて、散布された土着微生物が床に白く広がっていました。
 これからどんな巨峰が収穫できるか楽しみです。

ブラジルへ行ってきました(4)

 JICAのプロジェクトの仕事が終わった後、今回案内をして下さった高松さんが住むパラ州トメアスーに行きました。トメアスーはパラ州の州都ベレンからバスで5時間くらい南に下った所です。日本人が約300所帯居住しています。高松さんは比較的最近入植されたグループで、こちらに来て35年くらいになるそうです。



 左の写真はベレンからトメアスーに向かう途中、アマゾン川の支流を渡るフェリーです。  支流でもこの広さ、アマゾン川は大きい!!




 トメアスーに日本人が入植してから今年で80年になるそうです。最初は森を切り開き、畑にピメンタ(胡椒)を植え、戦後の胡椒景気に乗って、非常に儲かったそうです。組合も作られ輸出されました。










 ところが大面積の単一作物栽培がたたって病気が蔓延していまいました。別の場所を開墾して植えても、うまくいきませんでした。なんとかそれを克服しようと、研究した結果、様々な果樹と木を混植するアグロフォレストリーに行き着きました。

 トメアスーに着いた翌日、朝7時に農協の前に集合し、車で7軒の農家を訪問しました。アグロフォレストリーの取り組みは様々で、胡椒とアセロラ、バナナなどの混植もあれば、ブラジリアンココナッツのような大きな木とクプアスーやカカオなどの果樹の組み合わせもあります。



これがピメンタ(胡椒)です。支柱にからんでいく蔦性の植物です。 最近はアマゾンの森を守るために、支柱用の木材の伐採にも規制がかかるそうです。そのため生木にからませていく方向などが試みられていました。



















これはクプアスーという果樹です。クプアスーの白いジュースは甘くてとてもおいしい!!






  アグロフォレストリーは 様々な作物、果樹を植えることで、土中の微生物が多様化され、健康に育つのではないかと思います。また、ピメンタ(胡椒)は(特に初期生長期に)日陰が必要なのだそうです。そこで生長の早いバナナなどのそばに植えて強い太陽光線をさけると良いわけです。作物の性質や自然を活かした、自然農業にも通じる考え方だと思いました。

これは森を散歩しているように見えますが「畑」を回っているのです。ブラジリアンナッツとカカオなどの果樹の組み合わせです。




この方は除草剤を使用せず、豆科の植物で草生栽培を実施していました。

非常に良いそうです。











これはアサイーという椰子科の果樹です。ふさのようになっているところに濃い紫のベリーのような実がつきます。それを絞ってどろどろのジュースのようなものを取り出します。
 アマゾン川流域の人たちは食事のときに、このアサイーにキャッサバの粒を混ぜて食べたり、水でうすめてジュースにして飲んだりします。
 最近はポリフェノールの含有量が非常に多いという事でアメリカなどで人気になり、輸出作物になりました。








 この方はバナナの葉を有機物マルチに使用するために、ピメンタやアセロラなどの間に植えています。バナナの葉っぱは広くて効率が良いのです。マルチした枯れ葉の下をはぐってみると、白い菌がはしっている所もあり、ミミズを始めとする小動物がいっぱい発生していました。





2009年4月22日水曜日

漢方栄養剤の仕込み

 久留米市田主丸町での自然農業資材作り実習の準備で、漢方栄養剤を仕込みました。事務局で販売している漢方栄養剤セットは当帰1,2㎏、甘草600g、桂皮600gですが、半分を当日の実演用に残し、半分の量だけ仕込みました。













 漢方薬は乾燥しているので、液を抽出しやすいように、まずドブロクかビールを入れてふやかします。普通漢方薬は土瓶や鉄瓶で煎じて飲みますが、自然農業ではなるべく生のものの方が生命力があるという事で、熱を通さず抽出します。







 韓国ではドブロクはどこでも安く手に入りますが、日本では自家製造しないといけません。そこで発酵しているものということでビールを使用します。生ビールがいいのでしょうが、今回は安い発泡酒を使用しました。今回は500ml.の缶ビールを7缶使いました。当帰は量が2倍ありますし、吸収がよくてすぐふやけるので、さらにビールが必要です。

 ビールを入れると、当帰はすぐふくらんできます。



















甘草と桂皮はほとんどみかけは変わりません。






















 一日おいたら、同量の黒砂糖を入れます。今回は雨が降ったりして気温が下がったので、三日後になりました。 写真は500g入りのマスコバド糖です。




















 発酵させている間は和紙でふたをします。今回は障子紙を使用しました。中身と日付をマジックで表記しました。これを4~5日後に焼酎につけるのです。材料と焼酎は1対10ぐらいですが、3回ぐらい抽出できるので、焼酎は相当必要です。

2009年4月18日土曜日

愛媛県久万高原町で自然農業勉強会開催

 3月21日愛媛県上浮穴郡久万高原町で自然農業勉強会が開催されました。主催したのは愛媛県支部の皆さんです。協会役員の平岡新太郎氏が地元の方を中心に呼びかけ、同じく役員の泉精一氏が松山市など周辺の会員の方に呼びかけて実施されました。















 会場は久万高原町立直瀬小学校の体育館です。直瀬小学校は写真のように、地元の杉の木を全体に使用して建てられた、とてもモダンな学校です。久万高原町はかつて林業が盛んな村だったのですが、時代の流れで衰退してしまいました。しかし、学校を建てるときに「地元の資源を生かそう」という事で父兄が協力して材料を提供したそうです。デザインは有名な女性建築家(すみません、名前を忘れましたが)がしたそうです。木のぬくもりと明るい教室が印象的です。こんな校舎で勉強したら、子どもたちも楽しく出来るのではないかとうらやましくなりました。












 会場となった体育館も同じように杉の木がふんだんに使用されています。窓が大きくて、明るいです。
参加者は50名くらいでしたので、ちょっと大き過ぎました。

















 最初は、愛媛県中予地方局産業振興課久万農業指導班の新崎係長により、 「愛媛県における有機農業の取り組みと今後の方向」という事で、資料に基づき現況の報告がありました。
 次に泉精一氏による「自然農業の基本と土着微生物を生かしたボカシの作り方と使い方」という事で講演がありました。泉さん自身の養鶏とレモンなど柑橘栽培との複合経営を紹介しながら、自然農業の楽しさなどが語られました。会場にはその日収穫してきたレモンが持ち込まれ、参加者の方々に葉っぱと共に配られました。泉さんは「まず葉っぱを折って香りをかいでください。どうですか? いい匂いがするでしょう」と尋ねました。会場からは「いい匂い!」という声が上がりました。自然農業の農産物の品質の高さを充分アピールできたのではないでしょうか。

 次に姫野が自然農業のスライドを上映しながら、天恵緑汁など自然農業資材の紹介や、韓国の稲作の実践例などを紹介しました。
 平岡さんの奥さんや地域の奥さんたちの手作りのおもちをいただいて休憩した後、土着微生物の培養と天恵緑汁の作り方の講習会を平岡さんのお宅の倉庫で行いました。
 参加者の人たちはメモをとりながら、熱心に聞いていました。 平岡さんは「今後も引き続き、地域で勉強会を重ねて行きたい」と意欲を語ってくださいました

2009年4月1日水曜日

ブラジルへ行ってきました(3)

モイゼース氏の自然農業の取り組み


 3月6日 マカパの向かいにあるサンタナ島へ向かいました。雨のため船の中で少し待機した後、10時頃モイゼース氏を訪ねました。モイゼース氏はサンタナ農業改良普及所の畜産技師であり、獣医の資格も持っている方です。
 ここに農務局農業技師、RURAP(アマパ州農業改良普及所)の普及員、農林局の技師など10人程集まり、一緒に見学しました。モイゼース氏は養鶏など他の畜産も行っているが、この日は養豚を中心に見学しました。












  氏が作った天恵緑汁と土着微生物の元種も見せてもらいまし。天恵緑汁は一つの材料だけで仕込むのが基本ですが、氏は葉っぱや果実など様々混合して仕込んでいました。



















 モーゼス氏の豚舎は従来型のオガクズ豚舎でしたが、高松氏に自然農業式養豚の話を聞き、さっそく2週間前発酵床に切り替えたそうです。臭いもしないし、餌代が30%削減できたと喜んでいjました。
 発酵床は雨のせいもあるかもしれませんが、やや湿度が高いようでした。原因の一つは発酵飼料を床前面にまいていることだと思いました。発酵飼料だけでなく、イネ科の草がそのまま入れられており、それらの食べ残しが豚の糞と一緒になって、分解されずにそのまま残っていました。恐らく、「床がエサに変わる」という事で床を全部エサ場にしてしまったせいでしょう。そこで、「ここは豚の生活の場だから、台所もあればリビングルームもあって、トイレもあるという区別が必要だ」という話をしました。

 次に自家配合しているエサ作りの小屋を見学しました。ここで様々な果実の種を機械で破砕し、材料として活用されていました。私はこれに土着微生物の元種と土を混合して発酵させたものを、エサの10~15%入れても豚の成長に差し支えない、という提案をしました。










 次にすぐそばの森の中に土着微生物の採取を行っている現場を見学しました。椰子の葉っぱの覆いを取ると、ご飯を入れて仕込んだ木の箱がありました。
  ピンクの紙のふたをとるとご飯は表面が薄い黄色のおかゆ状態になっていました。日本で同じ様に仕込むとご飯の粒は残っていて、その粒を白い菌が覆った状態になります、ブラジルは気温も湿度も高いので、三日でこの様になってしまったのかもしれません。モイゼース氏に聞くと、ご飯の材料は細かいくず米を使用したとの事なので、そのせいもあると思いました。「土着微生物は森の神様なので、ご飯をささげる気持ちで良い米を使用した方が良い」と話しました。また、この状態で培養しても使用できるので、すぐ引き上げるように話しました。


 次に発酵飼料を仕込んでいる小屋を見学しました。屋根つきのコンクリートの箱に様々な葉っぱや果実、茎などが刻まれて籾殻と混合されていた。天恵緑汁の絞りかすも入れられており、甘酸っぱい香りがしていました。
 発酵飼料の仕込み方として、米ぬかと混合し、袋に入れて口をしばる嫌気発酵と、土着微生物の元種を混合し、切り替えしていく好気発酵があるが、ここの場合、そのどちらでもない点が問題だと思ったので指摘しました。籾殻はそのままでは発酵しにくいので良くない事と、コンクリートの箱の中に雨が振り込んだせいか、水があるのが問題だと思いました。材料を切り返して、屋根はありますが、上を何かで覆う必要があると思いました。


 最後に母豚舎を見学しました。一つの部屋では子豚七匹が母豚のおっぱいを元気よく飲んでいました。ここは床がコンクリートで発酵床を積み上げたようだが、薄すぎて湿気が多かったです。母豚の糞尿の量を考えると、発酵床の層を20~30センチは積み上げる必要があるのではないかと思いました。
 また、板でかこってあったので、換気が悪いせいもあるかと思いました。屋根に10~15センチ直径の丸い穴でもいいので、一列に開けられないか尋ねましたが、雨が心配だという答えでした。多少の雨の降り込みより、換気を優先した方が良いのではないかと思いましたが、当地の事情もあるので今後の課題としました。


 見学が終わって、午後からは州の企画局で自然農業のセミナーを行いました。午前中に見学で集まった人たちとモイゼース氏が参加しました。セミナーは自然農業の基本の話をし、後はパワーポイントで自然農業の自家製資材作り及び養豚について説明しました。参加者の方々は、特に自然農業による農産物のすごさにびっくりしていました。
 最後に自然農業の取り組みは個人的に行うより、行政などの支援を得て、組織的に行われる方が効果があるという提案を行いました。アマパ州は州政府として取り組みを考えると言っていました。今後が楽しみです。