2008年7月28日月曜日

固城郡視察団が来日しました(3)

米沢市の小関恭弘氏訪問


 6月26日は米沢市の小関恭弘さん宅を訪ねました。田んぼには仲間の会員の方たちも集まりました。小関さんは米を4.5ha.栽培しています。抑草アイガモ農法と米ヌカ散布を行っています。ここでも趙先生はイネを抜いて根を見ました。生育が少し阻害されているようだとの判断でした。「米ヌカの散布は雑草にいいかもしれないが、同時にイネの生育にも影響するので注意が必要です」との事でした。










 大豆、野菜、果物との複合経営

 次はキュウリの畑です。畝にはマルチがされていますが、間はワラが敷き詰められていました。「すべてマルチで覆わない所が良いです」と趙先生。韓国の方は次々に隣の畑へ行き、ナスの木に集まりました。これは白ナスだそうです。「たくさん枝分かれしており、しっかり育っている」と趙先生。
















おいしいサクランボに大喜び

 次はサクランボ農園です。ちょうど収穫の時期という事で、赤い実がたわわに実っていました。韓国ではめずらしいらしく、小関さんが採って食べていいですよ、と言うと、わーっと採り始めました。甘くておいしいサクランボに一同舌鼓を打ちました。 「この種を持って帰って植えたい」などの冗談が出る程でした。
食味コンクールで最優秀賞受賞

 最後はそばの公民館でパワーポイントによる小関さんの栽培や活動の紹介です。小関さんのグループは全国食味コンクールで何度も最優秀賞を獲得するなど、とても熱心です。これは自然農業で食味が良くなる証でもあるので非常にうれしい事です。

 この視察ツアー中、千葉の宮崎憲治さんからトマトが、熊本の新田九州男さんからは河内晩柑が一行あてに送られてきました。自然農業の味を堪能してもらうと共に、暑い中での視察に最高の差し入れでした。



  新潟へ帰って、農家の直売所「お富さん」を見学しました。






 夜はホテルの研修室で農業ジャーナリストの大野和興氏に来ていただき、現在の世界農業情勢及び日本の現状、これからの方向性についての講演を聞かせていただきました。自然農業への取り組みの意義を改めて感じたと、韓国の方からの感想がありました。

2008年7月24日木曜日

固城郡視察団が来日しました(2)






土着微生物で連作障害なしの枝豆畑



 6月25日は山形県鶴岡市の志藤正一さん宅を訪ねました。志藤さんは自然農業に取り組んで十五年になります。まず、枝豆の畑です。志藤さんは枝豆を80aやっています。周囲の農家では枝豆は連作障害が出るので畑を移すそうですが、志藤さんは豚舎から出る堆肥や土着微生物のボカシ肥をやっているせいか、連作障害はないそうで、毎年同じ畑で作っているそうです。収量も一般と同じくらいあるし、何よりも味がいいのがうれしいとの事です。(後で昨年の枝豆を冷凍したものを試食させていただきましたが、本当においしかったです)
 写真はボカシ肥をまく機械で、根元にうまくまけるように志藤さんは工夫したそうです。韓国の方は収量や販売価格に関心があるようで質問していました。









合鴨と冬期湛水で抑草

 次は田んぼです。志藤さんは4.8ha.の田がありますが、除草は合鴨と冬期湛水法の二種類を交互に行っています。合鴨は韓国でもよく行われているので知っているようでしたが、冬期湛水法はあまり取り組まれていないようで、初めてその田んぼを見た人も多かったようです。
 趙先生に言われ、合鴨田の稲を抜いて根っこを見ました。細かい根が一杯出ていました。
 写真のイネは冬期湛水の田んぼです。冬期に水をはり、田の土にとろとろ層を作ることによって雑草を押さえます。去年の切り株のすぐそばに田植えをします。不耕起田のイネは草もなく、分けつもしっかりして丈夫なイネになっていました。

 その後、柿園を見学し、自然養豚の豚舎を見学しました。においのない豚舎を確認しました。特に豚を飼っている農家の人は強く関心を持ったようで、熱心に質問していました。

   次は志藤さんが理事長を務める農事組合法人「庄内協同ファーム」を訪ねました。農産物の共同出荷の話やもち加工の話を中心に伺いました。最後に記念品の贈答が行われました。固城郡で発見された恐竜の足跡のある海岸の写真です。

2008年7月13日日曜日

固城郡視察団が来日しました(1)

新潟県庁訪問

 6月23日より27日まで、韓国慶尚南道固城郡より李鶴烈(イー・ハンニョル)郡守以下32名が来日し、自然農業の農家や流通の現場を視察しました。
 24日は新潟県庁を訪問し、新潟県における有機農業の推進状況について県の担当者から話を伺いました。その後新潟県知事とも面会し、記念品を交換しました。





宮尾農場見学

 次に訪問したのは新潟市豊栄の宮尾浩史氏の農場です。道路のそばに自然農業の鶏舎があり、宮尾さん夫婦や近くの会員の方、群馬からは瀬戸哲夫さんも来ていて迎えてくれました。
 まず、鶏舎の横の田んぼの説明です。宮尾さんは四町あまりの田んぼを持っていますが、その内二町を有機栽培でJAS認証、残りは除草剤を一回だけ使用しているそうです。
「今までは代掻きを二回行い、とろとろ層を作って抑草する方法をとってきて、ある程度草が減ってきたのですが、今年は二回目の代掻きまでに4週間あけ、生えたコナギやヒエを田に練りこむ方法をとったところ、見事に草に覆われてしまいました」と宮尾さん。しかし、市内の学生や田んぼに関心のある人たちとの交流があるので、その人たちの手伝いをもらって先日草を抜いたそうです。韓国の人たちから「田植えはどうしているのか」「価格はどうなのか」などの質問が次々にされます。宮尾さんはニコニコしながらそれらの質問に答えます。何事にも前向きに取り組む宮尾さんの人柄が韓国の人たちにも好印象を与えたようです。

臭いのない鶏舎にびっくり
 次に鶏舎の前で自然養鶏の説明を聞きました。普通の養鶏場ならば、よそからの見学者を鶏舎の中に入れるのは嫌がるところですが、宮尾さんは「自然養鶏ですから、大丈夫です」と受け入れてくれました。









  まず、鶏舎のそばまで来ても臭いがないことに皆びっくりです。さらに趙先生が「鶏舎の床の土を持ってきなさい」と言い、宮尾さんが持ってきました。鶏が糞をした床土です。皆、次々に鼻を近づけますがまったく臭いがありません。固城郡守の李鶴烈さんも自ら床土を持って臭いをかぎますが、まったく臭わないので関心していました。









  宮尾さんの養鶏は、成鶏450羽です。養鶏を始めて14年、卵は80%は個人の直売で、残りの20%はレストランや自然食品店に販売しています。一時は卵がよく売れるので羽数を増やした事もあるそうですが、手が行き届かない面が出てきて、悩んだ末もとの羽数にもどしたそうです。「手が行き届かないと卵の質が安定しないんです。お客さんに質の良い卵を安定して届けるには今の羽数ぐらいがちょうどいいんです」と言います。


有畜複合経営の強み

 宮尾さんの家族はご両親と奥さん、子どもが3人で7人です。韓国の人が不思議そうに「この経営で暮らせますか」と率直な質問がありました。「十分です」というのが宮尾さんの答え。まず、お米も卵も産直なので、配達や発送の手間、それから顧客管理などの営業コストはかかりますが、一般の観光栽培のお米の2倍くらいの価格で売っています。田んぼから出るヌカや籾殻、ワラが鶏舎に行き、鶏舎から出る鶏糞が田んぼに行きます。とうもろこしの値段が上がったので、依然よりとうもろこしの使用を三分の一に減らし、かわりに飼料用の米をやっているそうです。有畜複合経営の強みですね。
 近くの川のそばからヨシをとってきて切り、青草としてたっぷりやります。卵の質は青草の多給で決まるとも言われます。ビタミンやミネラルの補給で健康な鶏になるわけです。

 また、宮尾さんのお宅ではお母さんが自給用の野菜を様々作っているので、食事はほとんどそれで賄えているそうです。卵などの配達はお父さんが受け持ってくれています。家族経営の強みで人件費がほとんどかかっていません。家族仲良くが自然農業の基本。その意味の深さに気づかされます。

 
お昼は奥さんとその友達の方による手作りの料理です。玄米ご飯にさまざまな野菜料理。仕事を終えた鶏の最後の「ご奉仕」の鶏肉も食卓を賑わせました。
食事の後もさらに詳しく宮尾さんから話を伺い、趙先生のまとめのお話で締め括られました。

 韓国の視察団の方が「こんなに歓迎してくださったお礼です」と言って、ノコギリをチェロのようの弓で弾いて音楽を演奏してくださる方がいらっしゃいました。すばらしい演奏で、一緒に口ずさみさながら楽しく聴かせていただきました。