2008年11月26日水曜日

自然農業全国大会で実践農家を見学しました(2)

 次に見学したのは八代市千丁町の園田崇博氏の農場です。
最初はキュウリのハウスです。苗を植えたばかりでした。ここは以前田んぼだったところで、最初始めた頃は肥料のやり方など管理に苦労したそうです。











次に見学したのはジャガイモの畑です。趙先生が葉の繁り具合を見て「これはチッ素が多すぎじゃないか」と言いました。自然農業の基本を忘れないようにとアドバイスしました。














 次に見学したのは松橋町の作本弘美氏の農場です。
土着微生物のボカシ専用の倉庫を見せてもらいました。作本さんはボカシを大量に作って、仲間の農家にも配っているのです。










材料は食品残滓をうまく活用しています。
これはくず大豆です。
また、納豆屋さんから出荷できない納豆ももらってきています。ボカシに納豆菌を繁殖させるためです。










作本さんはこのボカシを使って、レンコンを始めアスパラガスや白菜など様々な野菜を作っています。ボカシで味が良くなったと喜んでいました。





2008年11月21日金曜日

自然農業全国大会で実践農家を見学しました(1)


 最初に訪問したのは不知火町の澤村輝彦氏の農場です。





澤村さんは仲間の農家と肥後あゆみの会という組織を作り、共同出荷するなど活動を行っています。








    まず土着微生物の元種やボカシを製造する倉庫の見学です。土着微生物の培養は床をコンクリートではなく土の上で行うことが原則です。大量に製造するには機械を使用するので、どうしてもコンクリートにしがちですが、嫌気性発酵に向かいやすく均等に発酵できない点が問題です。そこで澤村さんは倉庫を作るときに、培養する場所はコンクリートを使用せず、土のままにしました。













   天恵緑汁、漢方栄養剤などを製造するのはこの大きなカメです。澤村さんはトマトの栽培中、ほぼ3,4日に一度玄米酢とともに散布するそうです。














 トマトのハウスは苗を植えたばかりでした。














 自然農業では苗は穴を掘って深く植えるのではなく、ベッドに乗せるだけです。この方が根が健康に育つのです。







第14回自然農業全国大会及び総会が開催されました


 去る10月29日30日、熊本県青年会館において第13回自然農業全国大会及び総会が開かれました。
 まず、泉精一会長の挨拶がありました。「今、食べ物に関しては大変な時代になりました。消費者は切実に安全な食を求めています。自然農業はすばらしい農業です。趙漢珪先生の活動で自然農業は今や世界に広がっています。新しい情報もあるようです。一緒に勉強して行きましょう!」という元気なアピールでした。
 その後、事務局姫野より2007年度の活動報告及び会計報告がなされ、拍手を持って承認されました。
 
 その後は趙漢珪先生の講演です。最近の世界的な指導活動の報告は目を瞠るようです。特に韓国の固城郡の成果はすばらしいものがあります。講演の後にパワーポイントで写真を写しながら報告がありました。
                               
会場には会員の方たちから送られた果物やお米、野菜、ジュースなどが展示されました。休憩時間には試食し、改めて自然農業による農産物の味の良いさを確認しました。会場に持ち込んで参加され方には説明を含めて今年の成果を報告していただきました。
   中でも鹿児島の高原さんの報告には驚きました。プリの趙先生の記事を読んで、豚の飼料に「土飼料」(土着微生物④番)を30%混ぜてあげたそうです。すると生長に支障がないばかりでなく、豚が病気もなく非常に健康で良かったと言うのです。エサに30%も混ぜるというのは相当勇気がいったと思います。それにしても土着微生物のパワーのすごさには驚きです。

2008年11月11日火曜日

固城郡の収穫祭に参加してきました


郡をあげて自然農業に取り組む固城郡



 去る10月韓国慶尚南道固城郡の「生命環境農業稲作初収穫祭」に参加しました。固城郡は郡守の李鶴烈氏が自然農業の導入に熱心で、郡をあげて取り組んでいるという話は聞いていました。しかし実際に現地に行ってみてその取り組みの徹底ぶりに驚きました。 左の写真は農業技術センターの正面玄関ですが、左の横断幕には「生命環境農業は大韓民国の農業革命であり、希望です」と書いてあります。


 次の写真は農業技術センターの「生命環境農業技術研究所」の建物です。別に部署を設け、研究所を作ったのです。生命環境農業というのが自然農業のことです。









   よく見るとあちこちに「2008年は生命環境農業の基盤造成の年」と掛かれたポスターが貼ってあり、センターの車にも、さらに職員の制服の胸ポケットにも同じキャッチフレーズが書いてあるのです。






























これは生命環境農業研究所の中の展示ハウスです。天窓のある自然農業式のハウスの中に資材やパネルがずらりと展示してあります。





 研究所で自然農業資材を共同作業で製造し、保管します。各家庭でも天恵緑汁などは製造されています。






 左の写真は魚のアミノ酸です。天恵緑汁でも漢方栄養剤でも、このようにふたの和紙の上にわらを丸めて置いておくと発酵が非常に良いそうです。











 これは米ヌカの袋の山です。土着微生物を培養するために集めたものです。来年の基盤造成に使用される予定です。











生産費は60%削減、収量は6%増収、価格は約2倍!
  会場に行く前に趙先生が田んぼへ案内してくださいました。取り組んだ田んぼは郡内16ヶ所で、全部で163ヘクタールですが、その中の一つです。趙先生が自ら田んぼへ降りて、イネをさわりながら「見て御覧なさい、すごいでしょ!」とやや興奮ぎみです。見るとイネは分げつも20~23本あり、粒数も多いのです。






 道ひとつ隔てた隣の慣行栽培の田を見ると、その差は歴然としています。除草はタニシとドジョウの投入で行われました。見渡してもヒエ一本生えていません。きれいなものです。
農業技術センターの報告書によると、収量はこの地域の平均的な収量が反当427㎏なのに対し、自然農業のイネは平均506kg.でした。約6%の増収です。農薬や化学肥料は使用せず、自然農業の資材(土着微生物、天恵緑汁、水溶性カルシウム、漢方栄養剤など)だけで栽培していますので生産費が60%削減され、反当54,445ウォン(約4,080円)しか掛からなかった。
 この自然農業で栽培された米は、固城郡の農協を通して慣行農法の米の2倍近い価格で販売されます。この行事の日にホームページも立ち上げられネット販売が始まりました。

 行事には地域の方だけでなく周辺からも参加があり、1000名近く集まりました。KBS,MBCなどテレビ局や新聞社の取材陣も来ていました。
 舞台で演じられる伝統舞踊では歌詞に「生命環境農業のイネを植えましょう」などと替え歌になって演じられました。






この地域への貢献を讃えて、趙漢珪先生は固城郡の名誉郡民証がこの日授与されました。

2008年9月26日金曜日

密陽市甘カキ研究会が来日しました

密陽市甘カキ研究会が来日しました

 去る9月1日~4日、韓国慶尚北道密陽市甘カキ研究会のメンバー18名が九州へ視察に来ました。甘カキ研究会は会長が李世榮さんという韓国の自然農業協会の有力メンバーで、以前より様々な交流を行ってきた方です。
 今回の来日に先立ち、昨年12月福岡の小ノ上喜三氏、池尻和守氏を講師に招請し、密陽市で講演会が開かれました。小ノ上氏は多収穫を目指す剪定法について実際に畑で柿の木を剪定しながら講義されました。池尻氏は栄養週期理論に基づく肥培管理について講義されました。この時の通訳も姫野が行いました。お二人は自然農業協会とは直接関係ありませんが、より良い作物を生産するために研究、実践されており、様々な点で学ばさせていただいてます。また、一昨年も韓国からの見学を受け入れていただいた経緯があります。

果樹研究センターで太秋について学ぶ

 さて、今回はまず、福岡空港から熊本へ向かい、松橋町にある熊本県農業試験所果樹研究センターを訪ねました。当初は筑紫野市の福岡県農業試験所を訪ねる予定だったのですが、外国人の視察は受け入れないと断られ、急遽熊本県の試験所を訪ねる事にしたのです。一昨年は韓国からの視察団を受け入れてもらったのですが、方針が変わったようで残念です。
 果樹研究センターへ着くと雨がザーッと降ってきました。担当の方がカキ園へ案内してくださいましたが、傘をさしての見学です。熊本県では新しい品種の開発として「太秋」「早秋」を導入しましたが、「早秋」は、糖度は高いが炭そ病に弱いという事で、主に「太秋」の研究を行っていました。「太秋」は韓国にも最近導入されていて、関心も非常に高いものでした。わたしも「太秋」は昨年初めて食べましたが、甘いし、噛んだ食感が独特でとてもおいしかったです。目をつぶって食べたら柿とは思わないかもしれません。それぐらい新鮮な驚きがありました。
 太秋は雄花や両方の性質を持った花がつくので、摘蕾、摘花をしっかりすること。枝の先の方、先の方へと花が着いていくので、木の中心部分が空きがちになる。中心部分の枝を予備枝として準備していく事が大事。などの特徴が話されました。雨よけハウスの中でも「太秋」が栽培されていました。こちらも棚栽培です。他の場所も富有に高接ぎして「太秋」が作られていました。二本仕立てや四本仕立てなど、剪定整枝の研究がそれぞれされていました。

 翌日はまず福岡県広川町の農機械メーカー「オーレック」を訪ねました。ここは主に乗用草刈り機を製造販売していて、開発にあたり小ノ上さんが関わったそうで、工場を見学することができました。
 工場を見学して驚いたのは、要所要所の作業場でロボットが導入されている事です。人間は材料を準備したり、機械に入力したり、出来上がったものを整理する程度で、後は全部ロボットが作業します。省力化でもあるし、安全でもあります。機械は韓国にも輸出されているそうです。
皆さん機械には関心があるようで、工場の見学も熱心でしたが、草刈り機の試乗も楽しそうにしていました。小ノ上さんは園を整地して機械が走れるようにし、草刈りも農薬散布も収穫も機械で作業した方がいいと言います。道路工事は自分でいつもやるそうです。

栄養週期栽培の池尻農園

 最初のほ場見学は田主丸町の池尻和守氏の農園です。場所は田主丸町の南、耳納山の麓にあります。カキの栽培面積は1町4反ですが、他に巨峰ブドウを1町6反栽培しています。田主丸はカキよりも巨峰で有名な場所です。故大井上康先生の指導のもと、日本で産地としては初めて巨峰が栽培された所で、昨年は巨峰開植五十周年記念事業が行われました。

池尻さんはこの1町4反のカキ園に肥料はアミノ酸肥料を20kg/10aしかやっていません。4月にマグネシウムを60㎏/10a、9月に消石灰を20kg/10a、あとは交代期処理として6月にリン酸とカリウムを、8月にリン酸を施肥しています。肥料代は一般の約5分の1ぐらいですみます。
 しかし、実の成りは立派です。昨年より小ノ上さんとの交流から剪定法を変え、昨年までは反当1.5トンだったのが今年は、反当2トンは充分あるだろうとの事です。味や品質が良いので有名デパートにも出荷しています。
その後、近くの公民館へ移動し、お話をゆっくり伺いました。公民館にはちょうど収穫真っ盛りの巨峰がお皿に盛られ、試食できるように準備されていました。皆栄養週期栽培の巨峰に舌鼓を打ちながらいただきました。









樹齢百年の柿の木

 
午後は小ノ上さんのカキ園を見学した後、杷木の木原巧さんのカキ園に行きました。ここ杷木の志波という所は初めて富有柿が導入された地域で、木原さんのカキ園には樹齢百年の柿の木がありました。韓国の方たちも百年の木は初めて見たという事で感動していました。その横には樹齢五十年の木が並んでいます。見かけは変わりません。
 木原さんに両方の木の違いについて尋ねてみると、百年の木の方がカキの味が良いそうです。年を重ねるにつれ味が良くなるなんて、すばらしい事ですね。そんな人生を歩めたらいいですね。柿の木から学ぶ事は多いです。


徹底した管理で大規模経営―小ノ上農園

 最後は小ノ上さんの自宅へ伺い、周辺の農園を見学しました。小ノ上さんの持論でもある「早期摘蕾、早期摘果が最重要」を証明してみせるように、摘蕾作業が遅かった園の実の成り具合などを見ながら説明してくださいました。柿の木の根元を見ると、竹の木の輪がはめてあります。これは苗木のときからはめて置くそうで、除草機の刃が木の幹を傷つけないように保護しているのです。
枝を高く仕立てて行くのも、高所作業者がある事を前提にしています。小ノ上さんの農園では高所作業者が9台あるそうです。
そして、剪定や摘蕾、摘果作業を従業員の人たちが誰でもできるように公式化しています。徒長枝の活かし方をマスターすれば、誰でも反当2~3トンは採れると言います。
夜は近くの原鶴温泉で食事の後、部屋で懇親会を開きました。お互いに細かい質疑応答をして深い交流が出来ました。

2008年8月31日日曜日

新版「おばさんのふしぎな畑」が発行されました


vol1とvol2が合本されました

 「おばさんのふしぎな畑」が発行されて10年以上たちました。お陰様で多くの皆様にお買い上げいただきまいた。この度増刷するにあたって、vol1とvol2を合わせ、新作も入れて再編集しました。サイズも少しコンパクトになってA5版です。「土着微生物を活かす」や「天恵緑汁のつくり方使い方」などと同じサイズです。208ページで1200円なので、お得です。
 改めて読み直してみると、自然農業の考え方や食べ物の大切さなどがよく分かるように丁寧に描かれています。さすが石橋さんですね!
 子どもや消費者の人対象に書かれたものですが、いろんな人に読んでほしいと思っています。販売促進のため、事務局では今まで自然農業に関心を持ってくださった各界の方々に謹呈いたしました。売れるといいなあ!

2008年8月17日日曜日

ブラジルの研修生受入れを行いました







ブラジルの研修生受入れを行いました


JICAのブラジル事業に関連して、7月2日より二人のブラジル人研修生の受入れを自然農業協会で行いました。今まで韓国との交流を中心に中国やタイなどアジアの国々との交流は行なってきましたが、遥か遠く地球の真裏にあるブラジルとの交流は初めてです。また、JICAの事業に協力するのも初めての事でしたが、自然農業ならばどんな国、地域においても応用がきくので、必ず何かの役に立つだろうと確信を持っていましたので協力することにしました。約3週間に亘って各地で行なわれた研修の様子を報告します。(姫野祐子)

アマゾンの森を守り、地域住民の生活を向上させる

JICAの事業はブラジル北部アマパ州アマゾン川河口近くの川岸に住む人たちを対象とし、生活の向上とアマゾンの森の環境を守る事を目的としています。事業の対象地域はバルゼア(氾濫原)と言われ、雨季にはアマゾン川の水位が高くなり、乾季でも一日に二回水位が上がるという所で、住民は高床式の住居に住んでいます。
これまでの事業で、森の木を材料にして家具などを加工する技術の指導や、焼畑農業をやめて森を守るために、多種多様な木を守り、育てるアグロフォレストリーの指導などが行われてきました。
ところが、住民の放し飼いの豚や鶏が畑や苗木を荒らしてしまうという問題が起こってしまい、畑に囲いをしていたのですが十分ではありませんでした。豚は近親交配の害で育ちが悪く、肥育も遅い。そこで効率の良い舎飼いの養豚法が求められていました。そうした中、自然農業の発酵床豚舎が注目されました。これならアマゾンの自然を守りながら、豚を飼うことができるし、効率的な養豚法で住民の生活の向上も図れると期待されたわけです。その導入を薦めたのは、ブラジルに移民して三十五年という高松寿彦さんという方で、JICAのこの事業でアグロフォレストリーの専門家として対象地域で指導をしている方です。友人から紹介され、舎飼いにするなら自然養豚がいいと思い、JICAに研修生の派遣を強く要望し、認められたのです。

ブラジルは広い!

今回来日したのは、事業対象地域で営農指導しているアマパ州農業改良普及所の責任者の方でマルコスさんとアントニオさんの二人です。
それにしてもブラジルは広い!面積は日本の二十三倍もあり、そこに一億六千万人の人が住んでいます。二十六の州と政府直轄地で成り立っていますが、州によって事情が全然違います。サンパウロを中心として南の方は大都市があり、気温もそれ程高くはありません。中間部は広大な農地が広がっています。それに比べアマゾン川周辺地域は熱帯雨林気候で、年間を通して暑く、湿度の高い地域です。経済的にも遅れており、就学率も低い地域です。一言でブラジルと言っても地域によってこんなに事情が違うのです。
研修に来たお二人が管轄している地域は、面積が九州の二倍くらいもあります。一通り回るだけでも一ヶ月は有にかかってしまいます。一〇〇ヘクタール以下の農地では農業としてカウントされないくらい小規模なのだそうです。スケールの違いに戸惑うことが多いです。
さらにJICAの事業地域の事情が日本とは全然違うので、どう応用していくかが問題です。例えばブラジルでは主食が米と豆ですから稲作は行われていますが、この地域にはないので米ヌカやワラは他から持ってくるしかありません。あるいはトウモロコシやバナナの茎などで代用する方法です。黒砂糖の価格も一般の白砂糖の六~八倍もするので、天恵緑汁等で気軽に使うわけにはいきません。その代わり、アマゾンの豊かな自然資源は家畜のえさには最適です。すでに趙漢珪先生がインドネシアやマレーシアなど熱帯地域にも自然農業の普及を行なってきていますので、それらの国での実践事例などを参考にしながら、研修を行ないました。

自然農業の基本講習

 2日~4日までは八幡市のJICA九州センターで自然農業の基本的な講義を姫野が行いました。土着微生物の話は、人間にとって腸内微生物が健康にとって大事な事と同じく、健康な作物を栽培するためには畑の土壌微生物が大事で、中でも地域に昔から棲んでいた土着微生物が重要だと説明しましたが、よく理解してくれたようです。それにしても日本や韓国などアジアには発酵食品が多いので、その知恵を農業に活かすという事は世界に誇れる発想だと思います。
 また、自然農業の特徴でもある豚舎や鶏舎のしくみは非常に関心を持って聞いてくれました。ブラジルでは大規模の企業型畜産が一般的なようです。自然の恵みを活かした、家族型畜産による質の良い畜産物の生産はこれから注目されるようになるかもしれないそうです。
 しかし「自他一体の原理」など、自然農業の哲学的な背景の話を理解してもらうのは難しかったです。三気二熱四体の「気」とか、「無」から「有」を作る「色即是空、空即是色」など、東洋思想を下敷きにした自然観、生命観はブラジルの人には馴染みにくいようでした。それでも、自然を大事にし、環境を守る気持ちは同じなので、それなりに理解してもらったようです。
 講義はJICAが派遣したポルトガル語の通訳を通して行いましたが、細かいニュアンスが伝わったかどうか、もどかしさを感じました。国際交流の難しさの一つです。細かい事より、核となる本質部分を確実に伝える事が大事なのだという事を学びました。
5日は福岡県桂川町の古野隆雄さんを訪ね、合鴨水稲同時作の田を見学しました。畜産と稲作の組み合わせがおもしろかったようです。また、古野さんは九州大学農学部を卒業されたそうですが、最近論文を提出して農学博士になられました。手伝っている息子さんたちもそれぞれ大学を卒業されていました。それを見て「農学博士が農業をやっているなんてブラジルにはいない」と驚いていました。

土着微生物の活用を学ぶ

7日~11日は天草の山下守さん宅で土着微生物や天恵緑汁の実習及び養豚の研修を行いました。
 山下守さんは14年前に自然農業の基本講習会を受講し、翌年には韓国で行われた畜産専門講習会を受講、帰国してからさっそく自然養豚式豚舎を建設し、自然養豚を始めました。日本の自然養豚の先駆者にあたる人です。今回ブラジルからの研修生を受け入れるにあたり、なるべく南の方で実践していて、経験の長い方にお願いしたいと思い、協力していただくことになりました。
 山下さんは母豚三十頭の一貫経営で、肥育豚舎を自然農業式にしています。豚舎の床はサラサラの部分と湿ってドロドロの部分があります。土が豚に付いて黒くなっていて、見た目は悪いのですが、夏場は少し湿っていた方を豚は好むそうです。あまりドロドロすると表面をかぎとって外に出します。今回はその作業も研修中に出来るように計画されていました。
 到着した日は山下さんの豚舎や牛舎を見学した後、近くに住む中井俊作さんのお宅を訪ね、不耕起の田んぼや畑を見学しました。中井さんは自給自足にこだわって暮らしている人で、なるべく電気やガスを使いません。夕食をごちそうになりましたが、ご飯も七輪で炊いていました。持参した山下さんの豚肉と、中津ミートの無添加ウィンナーで焼く肉パーティーです。ブラジルでやるシュハスコみたいという事でマルコスさんやアントニオさんも大喜びでした。



 翌日はまず裏山に仕掛けておいた杉のお弁当箱を見に行き、土着微生物が十分繁殖していたので、持ち帰って黒砂糖に漬け込む作業を行いました。
 杉のお弁当箱に仕掛けたご飯には白い菌が主に繁殖していて、少し黒い菌もありましたが、これで十分との事です。丁寧に黒砂糖をまぶしながら、かめに漬け込みました。






次は天恵緑汁の実習です。時期的にヨモギやセリなどもないのでカボチャでやりました。私はカボチャの天恵緑汁は初めてでしたが、山下さんは夏場によく利用するそうです。汁がいっぱい採れるので良いその事です。漬け込むためにカボチャを包丁で刻みましたが、堅いので大変です。でも一生懸命アントニオさんが十個あまりのカボチャを刻んで、黒砂糖をまぶし、かめに漬け込みました。
 また、お米のとぎ汁を三日前から置いておいたものに十倍の牛乳を注ぎ、乳酸菌血清作りもしました。五日もすればきれいに分離した様子が見られるはずです。
 何しろ暑いので、休憩しながらの作業です。ちょうど山下さんが栽培する河内晩柑が熟していて、休憩のときには果汁たっぷりのみかんをいただきました。さわやかな河内晩柑がのどを潤してくれました。研修が終わった後の感想でマルコスさんが、この河内晩柑の味が忘れられないと言っていた程です。
 山下さんは豚舎や牛舎から出る堆肥をデコポンやこの河内晩柑の畑に入れています。木がとても健康で、たくさん実らせても充分持ちます。「土着微生物の力だと思います」と山下さん。
 
午後からはエサ用にする土着微生物の配合作業をしました。混合機に米ヌカやフスマなど材料を投入し、土着微生物や天恵緑汁を入れました。天恵緑汁の材料はスイカでした。混合機から取り出すと、山にしました。翌日はこの山を切り返しながら場所を横に移動させます。早くもよい香りがただよっています。この切り替えし作業を一週間くらい行えば完成です。完成したものはビニール袋に入れて保管しておきます。
 飼料にこの土着微生物を混入することで、山下さんの豚は病気もせず、いつも健康です。豚舎の発酵床も食べますが、飼料からも土着微生物をとると、消化も良く、健康に良いようです。










ブラジルは遺伝子組み換え食品を徹底拒否


 16日、17日は関東方面で、大地を守る会の物流センターとらでぃっしゅぼーやを訪ね有機農産物の物流及びブランド化の研修を行いました。ブラジルにはこの様な有機農産物の宅配システムはないそうです。
この訪問中に安全な食品を求める消費者について話している中で、ブラジルでは遺伝子組み換え食品を徹底して拒否しているという話を聞きました。それは以前パラグアイを通して、ブラジルでは禁止されている家畜の成長促進剤が入るという事件があったそうです。なぜその事件が明るみになったかというと、その成長促進剤を魚の養殖に使った所があって、その水槽に胸まで浸かって働いていた従業員の男性の胸がふくらんで女っぽくなってしまい、これはおかしいという事で大騒ぎになり、バレてしまったそうです。その生長促進剤を使用した牛などは全頭廃棄処分されたのはもちろんです。そんな事があったので、「遺伝子組み換え食品なんか食べたら尻尾が生えてしまう」などと言って、徹底的に拒否されたそうです。家畜の飼料として輸入している大豆やトウモロコシをほとんど輸入に頼っている日本としては、かなり意識的に選択しないと遺伝子組み換えでないエサを食べて育てている畜産物を口にすることはできません。自国で全て生産できるブラジルはうらやましい限りです。







養豚から加工まで一貫経営する中津ミート

 18日は神奈川県愛川町の中津ミートで研修しました。社長の松下憲司さんがバス停まで迎えに来てくれ、さっそく車で新豚舎の建設現場へ行きました。ここには自然農業の知恵を生かした発酵床の豚房を作り、管理は切り返し作業や出荷の体重管理まで全て機械で行う近代式豚舎です。現在の経営規模をほぼ二倍に拡大する計画だそうです。
次に松下さんが経営する海老名畜産の見学をしました。母豚二九〇頭の一貫経営です。離乳した子豚が入る育成豚舎が自然農業式の発酵床です。古くなった豚舎は今後立て替えて分娩舎にする予定だそうです。悩みはエサの高騰もありますが、もっと深刻なのは遺伝子組み換えフリーの大豆やトウモロコシの輸入量が減っており、いつまで使用し続けられるかわからない事だそうです。ブラジルには遺伝子組み換えではない大豆やトウモロコシを生産していると聞いて、強い関心を持ちました。
お昼は近くのブラジルレストランで食べました。この近くは大きな工場もあり、日系ブラジル人が多く住んでいるそうで、ブラジル食材のお店もありました。久しぶりのブラジル料理に二人は喜んでいました。ブラジル料理はご飯に豆を煮たものが基本で、それに鶏肉や豚肉の焼いたものが添えられています。飲み物はめずらしいトロピカルフルーツのジュースです。日本人には馴染みやすい料理だと思いました。

 午後からは中津ミートの見学です。有限会社中津ミートは一九七九年に海老名畜産の子会社として設立され、現在は年商十億円という大きな会社です。海老名畜産で生産された豚を全てテーブルミートやハム・ソーセージに加工しています。午前中に出荷した豚が屠畜場からすぐ送られたものを温屠体というそうですが、それを加工しているので、決着剤なども入れないで無添加ハム・ソーセージが出来るそうです。そこが他の無添加ハム・ソーセージとは違う、中津ミートの大きな特色です。
工場の中を松下さんに案内してもらいました。松下さんは加工技術をドイツで学んだそうです。ここで使用している加工機械もドイツ製が多いようでした。金曜日の午後でしたので、作業はほぼ終わっていましたが、何人かの従業員の人たちが忙しそうに働いていました。
現在中津ミートでは、前日見学した大地を守る会やらでぃっしゅぼーやを始め、各地の生協などに出荷しています。現在でも足りない状況で、中津ミートも工場の規模拡大を計画しているそうです。

自然養鶏を研修
 
21日は群馬県沼田市の子持自然恵農場で研修を行いました。農場長の瀬戸哲夫さんが今回の研修の為にいろいろと準備をして待ってくれていました。鶏舎を案内して、自然養鶏の鶏舎の仕組みを説明した後、準備した育雛箱を使って丁寧に育雛技術を説明してくださいました。









 雛の成長に合わせて生活する空間を広げたり、エサ箱をだんだん大きなものに取り替えたり、ねずみなどの小動物よけに箱の下にもネットを張るなど、鶏の立場に立って設計されています。隅々にまで細かい意味があり、それらの技術の積み重ねが、健康を守り、産卵期間を長くして、経済的効果をもたらすという事を学びました。


 次にエサの配合作業も実演して見せてくれました。全て安全な自然の材料だけでできるえさにマルコスさんはしきりにびっくりしていました。何度も「ビタミン剤などの添加物は入れないのか?」と訪ねます。「ビタミンは青草を充分やすので入れる必要がない」と瀬戸さんは言います。また「微生物を入れて発酵させないのか?」との質問には「床を発酵させるのが基本です。発酵飼料は若い鶏にはやりません。自分の胃腸の中で発酵させるためです。年取った鶏にはやる事もあります」しかし青物のない冬場は、夏場に刈って作っておいたヨシなどで作ったサイレージはやるそうです。

午後からは近くの公民館でさらに詳しく自然養鶏について講義を受けました。写真やイラストのパネルも動員しての熱心な講義でした。自然養鶏がそのままJICAの事業対象地域で実践されるかどうかわかりませんが、氾濫原ではない別の地域で今回の研修が役に立つかもしれないとの事です。
今回の研修生受入れによって、外国人に自然農業を講義する難しさを知りましたが、同時に土着微生物を活かした農業はどんな国の人にでも理解してもらえる農法だと確信しました。
最後の研修評価会で、マルコスさんは感想として「アジア的思想を理解するのが難しかった」という事と「微生物のすばらしさについて学ぶことが出来た」という事と「帰ってから他の人に話すためには、学術的な裏付けがほしい」という事を言われました。今後の課題です。現地でモデル豚舎が出来たら、今回受け入れてくださった皆さんを誘って、ブラジルツアーを実施したいと思いました。実践してみてどうだったか、色々な話を聞けるのが楽しみです。