2008年12月22日月曜日

韓国龍仁市で生涯学習のお祭りに参加しました

 去る11月15日、韓国京畿道龍仁市ヘングンで開催された生涯学習のお祭りに参加してきました。龍仁市は地域の農協である遠三農協と共に生涯学習に力を入れています。 遠三農協は農協をあげて自然農業に取り組む農協として、今までに何度も見学ツアーで訪れ、プリでも紹介したところです。

 会場に近づくとにぎやかな音楽が聞こえてきました。会場になった集会所は色とりどりの風船で飾られています。農協組合長と婦人部部長が笑顔で出迎えてくれました。

 行事はまず、子どもたちの農楽です。伝統楽器による演奏はすばらしいものでした。










 次に生涯学習を受講したおばあさん達の登場です。韓国では子どもの頃に第二次世界大戦や韓国動乱(朝鮮戦争)のせいで学校教育を受ける事のできなかった人たちがいます。そんな70~80代のお年よりが識字教育を受けたり、講演を聴いたり、山へハイキングに行ったり、足マッサージを習ったりしました。
 おばあさんたちはマイクの前で、次々に自作の作文を読み上げました。たどたどしい読み方でしたが、一生懸命な姿に感動しました。その後は、調子のいい、にぎやかな音楽に乗って全員でダンスです。おそろいのピンクのシャツを着たおばあさんたちは、リズムに合わせて腰や手をふって踊ります。楽しくて思わず私たちも一緒に手を動かしていました.
 その後は皆でもちつきです。四角い板の上に蒸した米をおいて、杵でつきます。板の方が臼よりもいっぺんに大量につけるのです。出来たもちは、小さく切って、黄な粉をまぶします。韓国では黄な粉に、砂糖ではなく塩を混ぜてまぶします。塩の方が黄な粉の味がしっかりする感じがします。

 
お昼はそのおもちや地元の大豆で作った手作りの豆腐、茹で豚、キムチなどのごちそうです。おなかいっぱい食べた後はキムチ作りの実習です。一緒に作るのはソウルから来た若者たちです。見るとおそろいのエプロンをつけていて、胸にサムソン電子の文字がありました。サムソンは韓国一の財閥で、電子工業だけでなく、貿易、生命保険など様々な企業を持っています。
 韓国には一村一社運動というものがあります。一つの村と企業が手を結び、企業は農産物を買ったり、行事に参加したりし、村はグリーンツーリズムとして都市生活者を受け入れるというもの。龍仁市はサムソン電子と提携していたわけです。

 ソウルに住む最近の若者はキムチの漬け方もあまり知りません。私たちと一緒に大量の白菜キムチを作りながら、冗談を言い合ってにぎやかなものです。おばあさんたちは唐辛子粉を足したり、塩かげんを見たりして味付けに余念がありません。サムソンの男の子に味見をさせたりしています。こんなふれあいで、自然に農村への理解やお年寄りを大切にすることが学べるわけです。おもしろい試みだと思いました。

2008年12月20日土曜日

新田農園を見学しました

 12月15日、田主丸自然農業研究会は水俣市の新田農園を見学しました。自然農業に取り組んで15年、経験を積んだからこそ聞ける話は非常に勉強になりました。









 まずは土着微生物のボカシ肥の現場の見学です。
新田さんは「ボカシ肥がいいのは安い、という事なんです。肥料は一袋2,000円はするでしょう。一年でいくらになりますか。ボカシ肥は材料はほとんどかかりません。これはカツオ節の工場からもらう魚の頭とかのアラです。米ヌカもフレコンで安く手に入ります。あとは油粕とかです。」
 具体的な、実感のこもった話がとても説得力があります。





 新田さんは柑橘を栽培しています。デコポンはハウスと露地があります。

 「農薬はイオウフロアブルという石灰硫黄合剤だけです。殺虫剤は天敵も殺すのでまた散布しなければいけなくなる。ダニも一度そのまま見てみてください。増えるだけ増えたら止まりますよ」と新田さん。

今年は成りが悪いとおっしゃいましたが、このデコポンはりっぱに成っています。










 最近グレープフルーツも植え、少しずつ収穫できるようになりました。グレープフルーツは無農薬で栽培でき、自然農業栽培に向いた品種だそうです。

 見学が終わった後は、新田さんが委託製造してもらった河内晩柑ジュースをいただきながら、さらに詳しい話を聞きました。
「自然農業をやるなら基本講習会を受けなきゃいけません。まずそこからです」と強調しました。
 一緒に来てくださった吉田さんも「まず、ボカシ肥を作る小屋を作ることから始めないと。環境をしっかり整えれば取り組みやすいですよ」とアドバイスしてくれました。

2008年12月12日金曜日

田主丸町で土着微生物の講習会がありました

 12月4日、福岡県久留米市田主丸町で土着微生物の培養講習会がありました。主催したのは田主丸自然農業研究会。やや雨模様の天気でしたが、朝9時から20名弱の参加でした。場所は代表の池尻和守さんのブドウ畑のハウスです。












 池尻さんが準備した土着微生物③番(元種)にさらに米ぬかを混ぜて拡大培養します。実際は何日か発酵させて完成ですが、講習会では出来たと仮定して、続けて土着微生物④番の製造に入りました。

土着微生物③番と土を1対1で混合しますが、その土の1はブドウ園の土0.5と赤土0.5です。1反の畑に150kg④番をやるためにはそれぞれ75㎏ずつ混合することになります。はかりで計るわけにはいかないので、バケツでだいたいの量を合わせました。

 しかし、混合してみると土自体の水分が多かったのか、握ると固まってしまいます。しかたがないので、水分調整のためにさらに米ぬかを2袋混ぜました。

 この写真は池尻さんの奥さんが、土着微生物の③番を仕込んでいるときに、一部を苗床にまいたものです。三日くらい前だったそうですが、覆いをとるとごらんの通り、真っ白に繁殖していました。
 ただし、出たチンゲン菜の芽の葉先が白くなっているのがありました。やはり土を混ぜて発酵の終わった4番でないと障害が出るようです。
 しかし、土着微生物が実際に繁殖しているのを初めて見た人も多く、参考になりました。
 

 





2008年12月11日木曜日

鹿児島県交流会がありました

  12月2日、市比野温泉薩摩の里において、鹿児島県交流会が開かれました。会員7名、非会員6名で13名の参加でした。 鹿児島での勉強会は久しぶりでした。
 自己紹介、自然農業の紹介、実践報告などを行いました。韓国固城郡の稲作と自然農業一般作物を紹介するパワーポイントをノートパソコン上でしたが上映しました。 たくさん付いたブロッコリーや巨大なキャベツやカリフラワーの写真を初めて見て「これなら儲かる!」と驚きの声があがりました。

 懇親会の最後には、熊本で有機農産物の流通の仕事をしている天波さんによるギターの演奏が行われました。農業や百姓を応援する自作の歌も歌ってくれ、大いに盛り上がりました。
 色々な方たちとの交流が出来た勉強会でした。



 翌日、せっかく鹿児島まで来たので東谷さんと長崎さんのお宅を訪ねました。



 まず伺ったのは金峰町の東谷さんのお宅です。東谷さんはお米を中心に、鶏、野菜などを栽培しています。 ご主人は消防署に勤めていたので、農業は今まで奥さんが中心になって担ってきました。最近ご主人が退職され、一緒に農業をやるようになりました。ご夫婦とも基本講習会に参加されました。


鶏はプリマスロックです。肉もおいしい品種だそうです。今は羽数を減らして自家用です。
えさも自家製です。











 


  数年前から金峰町では全国の修学旅行生の受け入れを行っています。 一軒で3、4人受け入れ、農業体験をして泊まっていきます。金峰町には浜辺もあるので、海遊びも出来ます。自然に触れ、農業体験をし、他人の家で友達とご飯を食べて一泊する。観光地を巡るだけの修学旅行よりもはるかに子ども達にとっては思い出に残る旅になることでしょう。
東谷さん夫婦は「受け入れは大変だけど楽しい」と言います。中には別れるとき泣く子もいるそうです。















 この畑はカボチャの畑です。 南向きの広い畑です。防風のために雑穀を植えています。
ポツポツと草の中に見えているのが新聞にくるまれたカボチャです。今日これから子ども達に収穫してもらうのを待っています。
 残念ながら時間の関係で子ども達に会うことはできませんでした。









 次に伺ったのは笠沙町の長崎大海さんのお宅です。
長崎さんは東京で仕事をしていましたが、帰農して柑橘を栽培しています。画家で自宅には広いアトリエがあり、長崎さんが描いた作品がたくさん飾ってありました。目が印象的で力強い線の、ルオーのような絵でした。
 数年前に水俣の新田九州男さんに出会ったのをきっかけに自然農業に取り組み始めました。昨年基本講習会も受講しました。

 これはタンカンの木です。今年は豊作だそうです。「自然農業に取り組んで味が良くなったのがうれしい」と長崎さんは言います。 また「僕の取り組みを理解してくれる人も増え、お陰で販売先も増えました。」と言います。

 消費者の動向を睨んで、品種の選択も重要です。長崎さんは畑も広げ、レモンやグレープフルーツも植えました。

 もっと鹿児島に仲間を増やしたいと語りました。

長崎さんのタンカンについては、今年の2月20日にも載せましたので参考にしてください。















2008年11月26日水曜日

固城郡の自然農業パプリカ栽培

 韓国の慶尚南道固城郡の稲作については前回報告しましたが、自然農業への取り組みは稲作だけではなく、果樹や野菜も取り組まれています。さらに自然養鶏も始まる予定だそうです。

今回はハウスでパプリカを栽培している姜俊淳(カン・ジュンスン)さんを紹介します。

彼はもともと会社務めをしていたそうですが、3年前に就農しました。

このハウスはガラス製で広さは3,000坪あります。知り合いがやめたのをそのまま引き受けたそうです。 ここにパプリカを35,000株植えています。









 最初は慣行農法で取り組みましたが、今年7月に自然農業の基本講習会を受講、続いて専門講習会も受講し、現在では無農薬でパプリカを栽培しています。

 ご覧下さい! この見事なパプリカ!

このパプリカは95%日本に輸出だそうです。ただ、現在は特に自然農業による栽培だからということで特別に出荷しているわけではないそうです。

最初趙漢珪先生が見に来たときは草丈が7メートルもあったそうです。でも収量はそれ程でもなかった。





それが自然農業に取り組み、指導通りに実践したところ、葉が厚くなって健康になりました。栄養週期に沿って液肥を施したら、無効分けつがなくなって、収量が増えました。 予想では30%は増えるだろうとの事です。
これから赤くなって行きます。別のハウスでは黄色いタイプも栽培しています。

アブラムシにはせっけん水で対処しているそうです。

潅水チューブを通して土着微生物の液肥や天恵緑汁、玄米酢など各種資材をやり、さらに必要に応じて葉面散布も行っています。











この日はKBSテレビの取材もあり、趙先生が現場で指導しているところが撮影されました。











自然農業全国大会で実践農家を見学しました(2)

 次に見学したのは八代市千丁町の園田崇博氏の農場です。
最初はキュウリのハウスです。苗を植えたばかりでした。ここは以前田んぼだったところで、最初始めた頃は肥料のやり方など管理に苦労したそうです。











次に見学したのはジャガイモの畑です。趙先生が葉の繁り具合を見て「これはチッ素が多すぎじゃないか」と言いました。自然農業の基本を忘れないようにとアドバイスしました。














 次に見学したのは松橋町の作本弘美氏の農場です。
土着微生物のボカシ専用の倉庫を見せてもらいました。作本さんはボカシを大量に作って、仲間の農家にも配っているのです。










材料は食品残滓をうまく活用しています。
これはくず大豆です。
また、納豆屋さんから出荷できない納豆ももらってきています。ボカシに納豆菌を繁殖させるためです。










作本さんはこのボカシを使って、レンコンを始めアスパラガスや白菜など様々な野菜を作っています。ボカシで味が良くなったと喜んでいました。





2008年11月21日金曜日

自然農業全国大会で実践農家を見学しました(1)


 最初に訪問したのは不知火町の澤村輝彦氏の農場です。





澤村さんは仲間の農家と肥後あゆみの会という組織を作り、共同出荷するなど活動を行っています。








    まず土着微生物の元種やボカシを製造する倉庫の見学です。土着微生物の培養は床をコンクリートではなく土の上で行うことが原則です。大量に製造するには機械を使用するので、どうしてもコンクリートにしがちですが、嫌気性発酵に向かいやすく均等に発酵できない点が問題です。そこで澤村さんは倉庫を作るときに、培養する場所はコンクリートを使用せず、土のままにしました。













   天恵緑汁、漢方栄養剤などを製造するのはこの大きなカメです。澤村さんはトマトの栽培中、ほぼ3,4日に一度玄米酢とともに散布するそうです。














 トマトのハウスは苗を植えたばかりでした。














 自然農業では苗は穴を掘って深く植えるのではなく、ベッドに乗せるだけです。この方が根が健康に育つのです。







第14回自然農業全国大会及び総会が開催されました


 去る10月29日30日、熊本県青年会館において第13回自然農業全国大会及び総会が開かれました。
 まず、泉精一会長の挨拶がありました。「今、食べ物に関しては大変な時代になりました。消費者は切実に安全な食を求めています。自然農業はすばらしい農業です。趙漢珪先生の活動で自然農業は今や世界に広がっています。新しい情報もあるようです。一緒に勉強して行きましょう!」という元気なアピールでした。
 その後、事務局姫野より2007年度の活動報告及び会計報告がなされ、拍手を持って承認されました。
 
 その後は趙漢珪先生の講演です。最近の世界的な指導活動の報告は目を瞠るようです。特に韓国の固城郡の成果はすばらしいものがあります。講演の後にパワーポイントで写真を写しながら報告がありました。
                               
会場には会員の方たちから送られた果物やお米、野菜、ジュースなどが展示されました。休憩時間には試食し、改めて自然農業による農産物の味の良いさを確認しました。会場に持ち込んで参加され方には説明を含めて今年の成果を報告していただきました。
   中でも鹿児島の高原さんの報告には驚きました。プリの趙先生の記事を読んで、豚の飼料に「土飼料」(土着微生物④番)を30%混ぜてあげたそうです。すると生長に支障がないばかりでなく、豚が病気もなく非常に健康で良かったと言うのです。エサに30%も混ぜるというのは相当勇気がいったと思います。それにしても土着微生物のパワーのすごさには驚きです。

2008年11月11日火曜日

固城郡の収穫祭に参加してきました


郡をあげて自然農業に取り組む固城郡



 去る10月韓国慶尚南道固城郡の「生命環境農業稲作初収穫祭」に参加しました。固城郡は郡守の李鶴烈氏が自然農業の導入に熱心で、郡をあげて取り組んでいるという話は聞いていました。しかし実際に現地に行ってみてその取り組みの徹底ぶりに驚きました。 左の写真は農業技術センターの正面玄関ですが、左の横断幕には「生命環境農業は大韓民国の農業革命であり、希望です」と書いてあります。


 次の写真は農業技術センターの「生命環境農業技術研究所」の建物です。別に部署を設け、研究所を作ったのです。生命環境農業というのが自然農業のことです。









   よく見るとあちこちに「2008年は生命環境農業の基盤造成の年」と掛かれたポスターが貼ってあり、センターの車にも、さらに職員の制服の胸ポケットにも同じキャッチフレーズが書いてあるのです。






























これは生命環境農業研究所の中の展示ハウスです。天窓のある自然農業式のハウスの中に資材やパネルがずらりと展示してあります。





 研究所で自然農業資材を共同作業で製造し、保管します。各家庭でも天恵緑汁などは製造されています。






 左の写真は魚のアミノ酸です。天恵緑汁でも漢方栄養剤でも、このようにふたの和紙の上にわらを丸めて置いておくと発酵が非常に良いそうです。











 これは米ヌカの袋の山です。土着微生物を培養するために集めたものです。来年の基盤造成に使用される予定です。











生産費は60%削減、収量は6%増収、価格は約2倍!
  会場に行く前に趙先生が田んぼへ案内してくださいました。取り組んだ田んぼは郡内16ヶ所で、全部で163ヘクタールですが、その中の一つです。趙先生が自ら田んぼへ降りて、イネをさわりながら「見て御覧なさい、すごいでしょ!」とやや興奮ぎみです。見るとイネは分げつも20~23本あり、粒数も多いのです。






 道ひとつ隔てた隣の慣行栽培の田を見ると、その差は歴然としています。除草はタニシとドジョウの投入で行われました。見渡してもヒエ一本生えていません。きれいなものです。
農業技術センターの報告書によると、収量はこの地域の平均的な収量が反当427㎏なのに対し、自然農業のイネは平均506kg.でした。約6%の増収です。農薬や化学肥料は使用せず、自然農業の資材(土着微生物、天恵緑汁、水溶性カルシウム、漢方栄養剤など)だけで栽培していますので生産費が60%削減され、反当54,445ウォン(約4,080円)しか掛からなかった。
 この自然農業で栽培された米は、固城郡の農協を通して慣行農法の米の2倍近い価格で販売されます。この行事の日にホームページも立ち上げられネット販売が始まりました。

 行事には地域の方だけでなく周辺からも参加があり、1000名近く集まりました。KBS,MBCなどテレビ局や新聞社の取材陣も来ていました。
 舞台で演じられる伝統舞踊では歌詞に「生命環境農業のイネを植えましょう」などと替え歌になって演じられました。






この地域への貢献を讃えて、趙漢珪先生は固城郡の名誉郡民証がこの日授与されました。