2008年9月26日金曜日

密陽市甘カキ研究会が来日しました

密陽市甘カキ研究会が来日しました

 去る9月1日~4日、韓国慶尚北道密陽市甘カキ研究会のメンバー18名が九州へ視察に来ました。甘カキ研究会は会長が李世榮さんという韓国の自然農業協会の有力メンバーで、以前より様々な交流を行ってきた方です。
 今回の来日に先立ち、昨年12月福岡の小ノ上喜三氏、池尻和守氏を講師に招請し、密陽市で講演会が開かれました。小ノ上氏は多収穫を目指す剪定法について実際に畑で柿の木を剪定しながら講義されました。池尻氏は栄養週期理論に基づく肥培管理について講義されました。この時の通訳も姫野が行いました。お二人は自然農業協会とは直接関係ありませんが、より良い作物を生産するために研究、実践されており、様々な点で学ばさせていただいてます。また、一昨年も韓国からの見学を受け入れていただいた経緯があります。

果樹研究センターで太秋について学ぶ

 さて、今回はまず、福岡空港から熊本へ向かい、松橋町にある熊本県農業試験所果樹研究センターを訪ねました。当初は筑紫野市の福岡県農業試験所を訪ねる予定だったのですが、外国人の視察は受け入れないと断られ、急遽熊本県の試験所を訪ねる事にしたのです。一昨年は韓国からの視察団を受け入れてもらったのですが、方針が変わったようで残念です。
 果樹研究センターへ着くと雨がザーッと降ってきました。担当の方がカキ園へ案内してくださいましたが、傘をさしての見学です。熊本県では新しい品種の開発として「太秋」「早秋」を導入しましたが、「早秋」は、糖度は高いが炭そ病に弱いという事で、主に「太秋」の研究を行っていました。「太秋」は韓国にも最近導入されていて、関心も非常に高いものでした。わたしも「太秋」は昨年初めて食べましたが、甘いし、噛んだ食感が独特でとてもおいしかったです。目をつぶって食べたら柿とは思わないかもしれません。それぐらい新鮮な驚きがありました。
 太秋は雄花や両方の性質を持った花がつくので、摘蕾、摘花をしっかりすること。枝の先の方、先の方へと花が着いていくので、木の中心部分が空きがちになる。中心部分の枝を予備枝として準備していく事が大事。などの特徴が話されました。雨よけハウスの中でも「太秋」が栽培されていました。こちらも棚栽培です。他の場所も富有に高接ぎして「太秋」が作られていました。二本仕立てや四本仕立てなど、剪定整枝の研究がそれぞれされていました。

 翌日はまず福岡県広川町の農機械メーカー「オーレック」を訪ねました。ここは主に乗用草刈り機を製造販売していて、開発にあたり小ノ上さんが関わったそうで、工場を見学することができました。
 工場を見学して驚いたのは、要所要所の作業場でロボットが導入されている事です。人間は材料を準備したり、機械に入力したり、出来上がったものを整理する程度で、後は全部ロボットが作業します。省力化でもあるし、安全でもあります。機械は韓国にも輸出されているそうです。
皆さん機械には関心があるようで、工場の見学も熱心でしたが、草刈り機の試乗も楽しそうにしていました。小ノ上さんは園を整地して機械が走れるようにし、草刈りも農薬散布も収穫も機械で作業した方がいいと言います。道路工事は自分でいつもやるそうです。

栄養週期栽培の池尻農園

 最初のほ場見学は田主丸町の池尻和守氏の農園です。場所は田主丸町の南、耳納山の麓にあります。カキの栽培面積は1町4反ですが、他に巨峰ブドウを1町6反栽培しています。田主丸はカキよりも巨峰で有名な場所です。故大井上康先生の指導のもと、日本で産地としては初めて巨峰が栽培された所で、昨年は巨峰開植五十周年記念事業が行われました。

池尻さんはこの1町4反のカキ園に肥料はアミノ酸肥料を20kg/10aしかやっていません。4月にマグネシウムを60㎏/10a、9月に消石灰を20kg/10a、あとは交代期処理として6月にリン酸とカリウムを、8月にリン酸を施肥しています。肥料代は一般の約5分の1ぐらいですみます。
 しかし、実の成りは立派です。昨年より小ノ上さんとの交流から剪定法を変え、昨年までは反当1.5トンだったのが今年は、反当2トンは充分あるだろうとの事です。味や品質が良いので有名デパートにも出荷しています。
その後、近くの公民館へ移動し、お話をゆっくり伺いました。公民館にはちょうど収穫真っ盛りの巨峰がお皿に盛られ、試食できるように準備されていました。皆栄養週期栽培の巨峰に舌鼓を打ちながらいただきました。









樹齢百年の柿の木

 
午後は小ノ上さんのカキ園を見学した後、杷木の木原巧さんのカキ園に行きました。ここ杷木の志波という所は初めて富有柿が導入された地域で、木原さんのカキ園には樹齢百年の柿の木がありました。韓国の方たちも百年の木は初めて見たという事で感動していました。その横には樹齢五十年の木が並んでいます。見かけは変わりません。
 木原さんに両方の木の違いについて尋ねてみると、百年の木の方がカキの味が良いそうです。年を重ねるにつれ味が良くなるなんて、すばらしい事ですね。そんな人生を歩めたらいいですね。柿の木から学ぶ事は多いです。


徹底した管理で大規模経営―小ノ上農園

 最後は小ノ上さんの自宅へ伺い、周辺の農園を見学しました。小ノ上さんの持論でもある「早期摘蕾、早期摘果が最重要」を証明してみせるように、摘蕾作業が遅かった園の実の成り具合などを見ながら説明してくださいました。柿の木の根元を見ると、竹の木の輪がはめてあります。これは苗木のときからはめて置くそうで、除草機の刃が木の幹を傷つけないように保護しているのです。
枝を高く仕立てて行くのも、高所作業者がある事を前提にしています。小ノ上さんの農園では高所作業者が9台あるそうです。
そして、剪定や摘蕾、摘果作業を従業員の人たちが誰でもできるように公式化しています。徒長枝の活かし方をマスターすれば、誰でも反当2~3トンは採れると言います。
夜は近くの原鶴温泉で食事の後、部屋で懇親会を開きました。お互いに細かい質疑応答をして深い交流が出来ました。