2009年9月22日火曜日

韓国自然農業視察ツアーに行ってきました(4)

新規就農夫婦の挑戦

 最後に訪れたのは、最近自然農業の畜産を始めた夫婦の所でした。そこには真新しい牛舎、豚舎、鶏舎(採卵鶏、肉鶏)が建っていました。牛も豚も元気で肌にツヤがあります。鶏も落ち着いていて健康そうです。ストレスがないからでしょう。






 一通り見学して、天恵緑汁をご馳走になりながら、ご主人のお話を伺いました。「自然農業を始めて何年ですか?」誰かが尋ねました。すると笑いながら「全くの初めてです」という返事が返ってきました。どういう意味かと思ったら、なんと、農業そのものも初めてだと言うのです。会社を退職して、夫婦でこの土地を購入し、畜産事業を始めたというのです。お金に余裕のある方のようでしたが、それにしても勇気があるなと感心しました。


















 畜舎の建築費は牛、豚、鶏のすべてで日本円に換算して1000万円くらいとの事。日本ではこの3倍はかかるのではないかと思いました。日本では規制が多くて、なかなか安く畜舎が建てられません。様々な補助のある事もうらやましい限りです。






夫婦はここを、自然農業を学ぶ若者の研修施設としても利用できるようにしたいと言っていました。






さらに、販売やレストラン経営などを目指しているとの事。夢への実現はまだまだ続いていくようです。


有機農産物の販売コーナー

 ツアー最後の日は釜山で、おみやげ買いも兼ねて、農産物の販売状況を見にいきました。まずは農協のスーパーです。日本で言えばAマートです。大きな店舗にお客さんがいっぱいです。日本人観光客も多いのか、キムチを売る店員のおばさんは片言の日本語で「味見してください」と積極的です。







 お米などの穀類を売るコーナーへ行ってみると、一般栽培のお米と別に有機栽培のお米や雑穀を売っていました。



  
価格はこの写真で言うと、精米したての白米10キロ29,500ウォン(約2300円)、20キロ58,000ウォン(約4,460円)で、無農薬の合鴨米は7キロ29,500ウォン、10キロ40,500ウォンになっています。



 これらの価格は一般のお米の30%ぐらい高い価格でした。


 上の写真の上に表示されているのがが韓国の有機栽培の認証マークです。下部の横線の色が緑が有機栽培、青が無農薬、オレンジが低農薬です。袋にこのマークが入っています。
  下の写真は合鴨米やジャンボタニシ米など、様々な無農薬米の袋です。

 少し離れた野菜のコーナーも有機栽培の葉野菜コーナーがありました。 韓国では葉野菜を生でよく食べるので、なるべく安全なものを食べたい消費者が、少しぐらい高くても買うのが葉野菜ではないかと思いました。

その次ぎに行ったロッテ百貨店の地下食品売り場でも「オルガ」という大手の有機農産物販売会社が出店しており、有機農産物や加工品が販売されていました。

 韓国の消費者にも、すでに有機農産物を買う層が確立されてきているのように感じました。

2009年9月19日土曜日

韓国自然農業視察ツアーに行ってきました(3)

固城郡に次ぎ、谷城郡も取り組む

 次ぎに訪ねたのは全羅南道谷城郡でした。こちらも郡の所有するバスに職員を付けた迎えが来ました。趙先生が事前に準備したとはいえ、ここまで行政がしてくれることに、またびっくりです。夕食の歓迎会には郡守と副郡守まで出席して、私たちを歓迎してくれました。さらに、宿泊場所はホテルではなく、郡守が自宅に住んでいるため、迎賓館として使用している官舎でした。





 翌日まず訪ねたのは谷城郡の農業技術センターでした。ここにも自然農業の資材作り実習のためのハウスがありました。


 担当の職員の話によると、センターは技術指導と保管だけで、作るのは農家自身とのこと。天恵緑汁や漢方栄養剤、土着微生物の元種作りなどを行っており、できたものを入れたかめがずらりと並んでいました。



















 床に黄色いふたがあるので、何かと思って尋ねてみると、ふたを開けて見せてくれました。なんと海水の保管庫だったのです。自然農業では海水は必ず活用します。各農家でもこのような保管庫があるといいですね。






 次ぎにほ場の見学に行きました。1坪当たりの植え付け本数の試験が行われていました。50本、55本、60本、65本などです。今まで密植だったのを自然農業では粗植栽培になるので、試験を行っているわけです。職員の話では「45本でも大丈夫のようだ」と話していました。


















  さらに、印象的だったのは様々な品種の試験ほ場で、1トン採りという多収穫品種の話でした。「北と統一されたら、まず大量の食糧が必要になるので、味よりも多収穫の品種栽培が必要になるからです」

 日本で暮らしていると、北朝鮮は独裁政権で困った国といった 印象しか持ちませんが、韓国では分断された祖国の統一を願っているわけです。それに対し、すでに具体的に準備しているわけです。

 北朝鮮の体制が壊れたりしたら、日本にも多くの人たちが難民となって押し寄せてくるのではないかと思いますが、日本では民間も政府レベルでも、どう対処するか、考えられ、準備はされていないように思います。

連作障害も克服



 次ぎに訪れたのは、サンチュを作っているハウスでした。ここでは一番の問題が連作障害だそうです。それを防ぐために、稲を植えるなどして対処してきましたが、土着微生物の施用等、自然農業に取り組むようになって、それがなくなってきたそうです。
 最近メロン栽培も始めたそうですが、今年台風の被害を受けてしまったそうです。ハウスのビニールが吹き飛ばされて、周囲の農家では皆放棄してしまったそうです。そこへたまたま訪れていた趙先生に事情を話したところ、こうすれば大丈夫と処方されたそうです。半信半疑でやってみると、見事に回復したそうです。そんな話を一生懸命話してくれる主人の顔は喜びで一杯です。




2009年9月13日日曜日

韓国自然農業視察ツアーに行ってきました(2)

 自然農業に取り組んで2年目の成果

 研究所の職員の方から固城郡の取り組みについて説明を受けました。固城郡が郡をあげて自然農業に取り組んで、今年は二年目。昨年は天候に恵まれ、技術的に低い人でも豊作だった中、自然農業の田んぼでも良い成果を上げました。しかし、今年は梅雨の時期に雨が少なく、その後は大雨が続き、日照不足でした。一般的には出穂が遅れ、生育が思わしくありませんでした。しかし、自然農業に取り組んだ所では、例年通りの生育で、収量も期待できるとの事です。

 さっそく近くの田んぼへ行って見学しました。そこでは、慣行栽培、(国が奨める)親環境農業栽培、自然農業栽培と2~3反ずつ分けて実施されていました。
  同じ日(5月25日)に田植えをしたのに、確かに説明通り、慣行栽培のところではやっと穂が立ってきた段階、    
親環境農業ではバラつきが見られました。
  



























 しかし自然農業栽培の所では、もう穂が垂れ始めていました。分げつは20~25本くらい、粒数も120~140粒くらいありました。 品種はみな同じ「東進1号」という韓国で開発された品種で、固城郡でもっとも多く取り組まれている品種です。


















  これは農業技術センターの車です。車体の横と後ろには「生命環境農業で緑色成長を」というロゴがはでに入っています。
 お米を中心に、果物や野菜の写真も転写あちあります。
 職員の制服の胸ポケットにも「生命環境農業」のロゴが入っています。

 米の収量は昨年で、6~20%多かったそうです。販売は農協を通して販売していますが、30%高い価格で買い上げられています。お米の袋の裏には、土着微生物や天恵緑汁など活用した自然農業の栽培を紹介する写真が、栽培過程に沿って表示されており、熱の入れようが伝わってきます。
 最近は管内の学校給食にも使用されているそうです。

命がけで取り組んでいる郡守、李鶴烈氏

  翌日、郡庁を訪ね、郡守の李鶴烈氏に会いました。取り組むに当たっての苦労話の後、「今まででもっとも大きな出会いは趙漢珪博士との出会いです」と言われました。それを聞いて趙先生も思わず涙ぐんでいました。




 固城郡での取り組みには趙先生も全てを傾けてバックアップしたのです。

 韓国の李明博大統領も固城郡を訪ねてきたそうです。その時の大統領の話が紹介されました。大統領がまだ候補者だったとき、趙漢珪先生の研究所を訪ね、趙先生のセミナーを受け、一晩語り明かしたそうですが、「その時はまだ半信半疑だった。しかし、固城郡へ来て現場を見て、信じることが出来た」と感心して話してくれたそうです。

自然農業に取り組んで7年のキウィーフルーツ
 次にキウィーフルーツを見学しました。ここは自然農業に取り組んで7年になるそうです。雨よけハウスの入り口には有機農産物の認証を受けた看板が掲げられていました。
 ここの主人が熱心で、すばらしい成果を上げたのを見て、郡守も自然農業に惹かれていったそうです。

左のタンクは自然農業でも大事にしている薬水のタンクです。これが2つありました。右の写真は海水のタンクです。1トンくらいのタンクが3つありました。


下の写真は燻燃機です。もみがら燻炭を作り、その過程でもみ酢を採取します。さらに水溶性リン酸カルシウムを作るための豚や牛の骨も、一緒に入れて焼くそうです。これらの資材作りの装置も郡の援助を受けているそうです。うらやましい限りです。
 ここのキウィーは12農家がグループを作り、馬山市のデパートと契約して出荷しています。11月に収穫したキウィーはチルド保存し、8月くらいまで出荷するそうです。わたしたちも保冷庫から出してもらい、試食させていただきました。甘くてとてもおいしかったです。保冷庫から出して3日目くらいが一番おいしいそうです。









2009年9月11日金曜日

韓国自然農業視察ツアーに行ってきました(1)

郡が自然農業の研究所設置

 去る8月24日~27日に韓国の自然農業を視察するツアーがありました。参加したのは、自然農業協会の会員と九州東海大学の片野學教授率いる環境保全型農業研究会の会員の皆さんです。 いつも韓国を訪問して、自然農業への取り組みの徹底さに驚きますが、今回は特に行政が力を入れたら、ここまで実行できるという事を目の当たりにすることが出来、とても感銘をうけた旅行でした。

釜山港に各地から参加者が集合しました。そこへ迎えに来てくれたのは、これから訪ねる固城郡の所有するバスです。中から農業技術センターの職員の人が降りてきました。私たちのような民間が訪ねて、ここまでしてくれる事にまず、一同びっくりです。


 2時間くらい走って固城郡に到着しました。ここは何年か前に白亜紀の恐竜の足跡が多数発見され、それを観光資源にしています。町の街頭や橋の欄干に恐竜のデザインが施されて、なかなかかわいかったです。
 固城郡は南海岸に面した人口5万6千人の郡です。

 まず訪ねたのは「生命環境農業技術研究所」です。固城郡では郡守が自然農業に郡をあげて取り組むことが決まったとき、自然農業ではなく「生命環境農業」と名付けて取り組みました。

 
 固城郡には農業技術センターがすでにありますが、それとは別に自然農業を研究、普及するためにこの研究所を設けたのです。                       
 写真のように、天恵緑汁や漢方栄養剤が仕込まれたカメが、ハウスの中にずらりと並べられています。
ここで、農家の人たちがセンターの指導員の指導のもと、部落単位で共同で仕込みます。各自使用する分は家に持ってかえり、残りはセンターが保管します。

 各種手作り資材のつくり方のイラストがパネルで展示されており、訪れた人にも解りやすいようにしてあります。

 このハウスも天窓のついた自然農業式ハウスです。換気がいいので夏でも涼しくて過ごしやすいものです。施設栽培の基本です。
 よく乾くので、唐辛子など野菜を乾燥させるにも最高です。

 
自然農業式モデル畜舎も完成

 ここは昨年秋にも訪ねましたが、今回モデル畜舎も完成していて、牛、豚、鶏がすでに入っていました。自然農業は有畜複合農業を推奨しているので、研究所にはモデル畜舎が必ず必要なのです。

















 床はサラサラで、臭いもなく、みんなとても気持ちよさそうに過ごしています。

 土着微生物の力のすごさです。