2010年12月14日火曜日

韓国自然農業農場見学 6



 初年でも大きな成果 ブドウ


 次はユ・ジャンスさんの田んぼです。自分のほ場12ヘクタール全部を自然農業でやっています。苗はポットです。今年は1穴に2~3粒播種したが、昨年1穴に1~2粒の方が良かったように思う、と言います。去年はきれいに扇型に分げつしたそうです。今年は少し立っているので、陽が差し込まず、病気が出るおそれがあるとのこと。1坪あたりの植付株数は45株なので、かなり粗植ではある。




 雨が降り出したので、急いで次の所へ向かった。


次はチョー・スンブンさんという女性が一人でやっているブドウ畑です。品種はキャンベルです。
 話を伺おうとしたら、ともかくチョーさんが興奮して、次々話すので、通訳するのに大変なくらいでした。ともかく、今年初めて自然農業に取り組んだけど、大きな差が出たという事で、もう、うれしくてたまらないという事らしい。



 「こちらは土着微生物をまいた所、こちらはまいてない所、比べたら全然違うのがわかるでしょう」と言います。まず、土が全然違います。手を入れると、ふかふかですぐ入って行きます。土着微生物を入れてない方の畑は草が生えている所でも、かたくて手は入りません。天恵緑汁や漢方栄養剤は散布しているそうです。

 「実の粒が多いし、木に勢いがある。収量もすごく増えました。これまでこんなに収量があったことはありません」といい事ずくめです。さらに「今までは悪い所を取らなければならなかったけど、悪い粒がないから、そのままです。手がかからなくて楽です。私は3000坪を一人でやってるから、楽なのがうれしい」と言います。


 一次交代期に処理をしたので、房が伸びて摘粒をする必要がなくなったという事です。




 収量は2倍以上に 唐辛子




 最後はシン・チェスさんの唐辛子の畑です。畝間は2メートルとゆったりしている。支柱を立ててY字型に誘引していく栽培です。株間は1メートルでという指導でしたが、70センチにしたそうです。

 「自然農業でやると、今までのよりも収量が2倍以上に増えました。150キログラム多く収穫したのです」と言います。また質も上がったといいます。長さが長くなって、皮が厚くなりました。


 「乾かすのに時間がかかるけどね」と笑います。皮つやがあるので、ビニール袋に入れて販売するのに見栄えがいい言います。




 韓国の人にとって唐辛子はなくてはならない食べ物です。従って農家にとって、お米の次に大事な作物です。ところが、IMF以降、種が高騰して大変だそうです。F1なので、自家採取することができない。以前4000ウォンだったのが、現在4万ウォンに、つまり十倍になっているのです。農家にとっては大変な問題です。

2010年12月12日日曜日

韓国自然農業農場見学 5

 味や質、収量もあげる自然農業

  谷城郡内の実践ほ場も色々見せていただきました。最初はメロンハウスです。奥さんのパク・キナムさんが説明してくれました。ここでは、収穫後にイネを育て土つくりをします。すると、病気になりにくくなったし、味が良くなったといいます。また、今年は日本で使用されていると聞いて「クロタラリア」を植えて、イネと比較しているそうです。
 クロタラリアは豆科の一年草で、サツマイモなど根菜類のネコブセンチュウ対策に効果があるそうですが、キュウリ、メロン、トマトなどの果野類にも効果があり、日本の有機栽培農家で最近注目されているコンパニオンプランツです。
 
 パクさんが「日本ではメロンは小さいものが好まれますが、韓国では大きいものがいいのです」と言います。メロンは8キロの箱に入れますが、それに4個入ったものが320箱、3個入りが830箱、2個入りが130箱収穫したそうです。
 休憩用のハウスで、さっそく試食させてもらいました。 実物を見て、その大きさにびっくりです。3個入りのものをいただきましたが、大きい、大きい! 確かに、こんなに大きいと日本では買いにくいかもしれません。でも切ってもらっていただくと、甘くでおいしい! しかもエグみがなくて、さっぱりしているのです。
 もちろん8月でしたから暑くてのども渇いていました。そこへジューシーなメロンをいただいたので、おいしく感じたということはあると思います。でもすごくおいしいのです。。
 ハウスの奥さんがつぎつぎ切ってくれるメロンを次々食べて、食べて、もっとほしい! という感じです。
 こんなおいしいメロンは初めてです。
 自然農業に取り組んで3年目ほどだそうですが、病気がなくなったのが助かると奥さんは喜んで話します。
農薬はウドンコ病対策で、石灰硫黄合剤を使用します。散布のとき小麦粉を混ぜて散布するそうです。
 ともかく、土壌基盤造成が大事とのことです。イネやクロタラりアを刈る前に、土着微生物4番と基盤造成液を散布しておき、刈ってロータリーをかけた後定植します。
 これで、一年に3回作っても大丈夫との事です。





韓国自然農業農場見学 4

 谷城郡農業技術センターを中心に普及


 昨年、一昨年と訪れた慶尚北道固城郡の郡をあげての自然農業の取り組みについては、何度も紹介したが、その固城郡に刺激を受けて、郡をあげて取り組んでいるのが全羅南道谷城郡です。谷城郡は人口が3万4千で、耕地面積が5300ヘクタールあります。

 今回も最後に訪ねましたが、何といっても農業技術センターが熱心に取り組んでいるのが印象的です。







 農業技術センターの中に自然農業式ハウスが何棟か設置してあります。ここで、自然農業の各種資材作りの実習が行われ、出来上がった天恵緑汁や漢方栄養剤などの保管管理も行っています。










 郡には環境農業課という部署があり、そこの自然農業室のチーム長であるチョウ・ギョンフンさんが説明してくれました。


 写真の手に持っているのは、水溶性リン酸カルシウムの原料の豚の骨です。これを焼いて炭のように黒くなったものをを玄米酢につけます。





 谷城郡で取り組んでいる自然農業は、2009年には稲作23ha(30農家)、畜産(牛4頭、母豚10頭、鶏1,500羽)、果樹1ha(リンゴ)、野菜(メロン0.4ha、サンチュ0.4ha)でしたが、2010年には稲作67ha(30農家)、果樹(リンゴ1ha、ブドウ1ha、梅1ha)、野菜(メロン1ha、ニラ0.4ha、イチゴ0.4ha、唐辛子2,200株)、複合畜産(牛、豚、鶏、サンチュ)とさらに取り組みが増えています。





 多くの農家が自然農業に取り組む場合、天恵緑汁なども何10トンも入るような大きなタンクで仕込みがちだが、ここでは、20ℓのカメにそれぞれ仕込んでいる。発酵にとってカメが一番いいからだ。ハウスの中は作った人の名前が書かれたカメがずらーっと並んでいます。







 このハウスはもと、水耕栽培のハウスだったそうで、床下に養液の大きなタンクがあります。そこには自然農業では大切な海水が4トン余り、保管されていました。また、苗を置く台にカメを並べていましたが、土と離さないのが原則という事で、その台に土が敷かれ、その上にカメが載せられていました。




保管は保冷庫で行われていました。温度は10~12度に設定されています。


 現在当帰が何㍑、桂皮が何㍑、天恵緑汁が何㍑と、すべて記録されており、ここから農家が必要な量だけ受け取って帰ります。








 土着微生物の培養も常に行っています。ここには見学者も多いので、土着微生物2番、3番、展示してあるのです。

 農家は3番をもらって帰り、自宅で土を混ぜて発酵させ4番を作り、使用します。

2010年12月10日金曜日

韓国自然農業農場見学 3

 楽園のような農場

  次に訪問したのは、同じく潭陽のラ・サンチェさんの甘柿農場です。山の中腹に、しゃれた洋風の家がありました。ご本人は出かけて留守だったので、一緒に農業をやっている息子さんが説明してくださいました。とはいえ、その流暢な語り口は、今までに何度も見学者を受け入れて、説明をしてきたに違いないと推察させるものでした。






 「父は、違う世界を見てみたいとソウルへ働きにでましたが、ここは自分がいる場所ではないと気づき、もどって農業に専心することになりました。そして、自分の理想の村づくりをするために自然農業に取り組みはじめたのです」




 父の話をする彼の口調から、父への尊敬と一緒にこの自然農業をやっている喜び、生きている手ごたえを感じていることなどが感じられました。








   そして、すぐそばの農場を見たとき、見学者一同、言葉を失ってしまう程、魅せられてしまいました。写真をご覧ください。山の頂に向けて広がる柿園。下には一面の芝生が敷き詰められています。こんな農場は見たことがありません。まるで公園のようです。






 なんだかここにいるだけで、幸せな気分になってきます。お父さんがこの農園をどれだけ愛しているか、又、どんな村づくりを目指しているか、ただここに立っただけで、伝わってくるようです。






 見学者の中の吉田さんが「自然農業に取り組んで十年たつけど、これから目指す方向がはっきり分かったような気がする!」と、興奮して話します。柿園の中は草生栽培です。
 ここに立ってもなんだかとても気持ちいいのです。ラ・サンチェさんは生協などに出荷しているそうですが、消費者の見学も多く受け入れています。中には農園が気持ちいいので、ずっといる人もいるそうです。 
見学者の澤村さんが、一緒にきた息子さんと、ぜひ一緒に写真を撮ってくれと言います。ここには家族仲良く、みんなと仲良く、作物や微生物とも。自他一体の原理が体現されているからではないでしょうか。
写真の看板は、左が韓国の有機農産物認証のマークで、右が自然農業の認証マークです。農園の入り口に立っていました。

韓国自然農業現場見学2

イチゴハウスに稲で土つくり





 次に訪ねたのは、全羅南道潭陽のイチゴ農家パク・サンオさんのハウスです。長さが95メートルのハウスの中は一面にイネが植えられていました。パクさんはイチゴの収穫の後、イネを植えて土作りをしています。初めて7年目になるそうですが、イチゴの収穫期間が、一般的には4ヶ月ぐらいなのに比べ6ヶ月に伸びたそうです。品種によっては7,8ヶ月あるものもあるというのですから驚きです。






 イネは刈ったあと乾燥して保管し、イチゴを定植した後は通路に敷き藁として使用します。こうすることによってイチゴの根を傷めない働きをしますが、ワラから出る二酸化炭素がハウス内の濃度を調節してくれるのです。敷き藁をしたところと、していないハウスでCO2濃度を測って比較したところ、大きな差があったそうです。ワラは踏まれて分解してしまうので、収穫期間中はもう一度敷くそうです。
おいしいイチゴを朝採りで
 ここ潭陽では100軒近くのイチゴ農家がグループを作って自然農業に取り組んでいます。
 イチゴをもっともおいしい時に収穫するため、朝2時に起きて暗い中作業し、陽が上る前には出荷が終わるようにしているそうです。朝採りの新鮮なイチゴがお店に並ぶわけです。
 味の良さが消費者に評判で、注文に応じきれない程。グループの中では、日本円で年収2千万円もあげている人がいるそうです。