2009年2月4日水曜日

養豚勉強会がありました



 1月27日28日に神奈川県愛川町で自然養豚勉強会が開かれました。なかなか現場を離れにくい畜産農家にとって、勉強会開催は難しいのですが、今回は当協会の監事でもある松下憲司氏が新しい豚舎を建てたので、その見学を兼ねて勉強会を開こうということになったのです。当初予定していた趙漢珪先生は残念ながら来られませんでしたが、8名の参加で開催されました。











猛烈な反対運動にも負けず

 まずは豚舎の見学です。養鶏場の跡地を整地して建てられた豚舎ですが、敷地面積は一町5反と広々としています。総工費2億の大きな豚舎です。ここで肥育豚を3,500~4,000頭飼うことが出来るそうです。天井が高くて明るいので、外観はまるで体育館みたいです。
 松下さんの話によると、建設までには大変な苦労があったそうです。それは地域の人たちによる猛烈な反対運動です。この日はもう撤去されてありませんでしたが、敷地周辺には「悪臭追放」だの「公害反対」といった類の看板がいっぱい立っていたそうです。法的な手続きには何の問題もないにもかかわらず、愛川町の町長まで入って、組織が作られ、ときには会社の周りをデモ行進されたこともあったそうです。
反対派の人たちとの話し合いも何度も持たれたそうですが、「話し合いではなく、一方的に文句を言われる吊るし上げの会の様だった」と松下さんは言います。いくら今度建てる豚舎は臭いがしないという話をしても、全く信用されません。浄化槽には限外濾過装置を設置して、真水に等しい水にして流している程、環境には最大限気を使っている話をしても聞いてもらえません。それは松下さんの豚舎だけでなく、周囲には何万羽という大きな養鶏場もあり、長年に亘って悪臭を漂わせていたからです。
 そしてついにはこの問題が議会にまでかけられる様になったのですが、「有難いことに友達が協力してくれて」県知事の「神奈川県は畜産を振興する」という回答をもらい、一件落着となったのです。今では町長も「この豚を町の特産品にする」と言っているそうです。それにしても松下さんの「いい豚を育てて、おいしい肉やハムソーセージを作って消費者に供給するんだ」という強い意志がなければ、とても出来なかった事ではないかと思います。













広々とした豚舎


 そういう意味でも松下さんは、この新しい豚舎の発酵床には力を注いでいます。建設前に趙漢珪先生にアドバイスをもらい、「土と縁を切ってはいけない、コンクリートに穴を開けたら」との事で、発酵床の下のコンクリートには穴があけられています。


 この日は三日前に入ったばかりというSPF豚の子豚が100頭、広い発酵床の豚房を駆け回っていました。自然農業で薦める農家型用豚舎は一豚房の面積は9坪(1m.幅の通路を含む)で、20頭が基本ですが、この豚舎は肥育前期用の豚房が240㎡、後期用の豚房が320㎡と8~10倍の広さです。前期、後期併せて14豚房あり、250~300頭ずつ入れます。えさ場はコンクリートになっており、ウェットタイプのエサが給餌器から出ていました。えさ場にはスマートソートという豚が出荷に適した体重になったら、自動選別して別枠に集めることのできる装置が設置されていました。これで出荷時の重労働から解放されると松下さんは喜んでいました。


















発酵床を作る


 発酵床は山から土着微生物を採取してきて、米ヌカで元種を作り、それにオガクズや剪定枝のチップなどを混ぜ、自然塩と天恵緑汁、アミノキングの希釈液等を混合して発酵させて作っています。その発酵床を作っている豚舎の一角へ行ってみました。
 写真のように大きなスクリュー型の棒が2本、部屋の中を回転しながらゆっくり移動していきます。発酵を促す「切り返し」作業を機械で行っているのです。下からは空気がブロワーで送られるようになっており、発酵を促す仕組みです。
 見学に来た参加者の方々が各自、床材を取って匂いを嗅いだりして発酵の状態を見ます。この機械は堆肥舎で使用されているものを改良したものです。ここで発酵させて、豚房に運びますが、今後は定期的に切り返し作業を行う期間についてはこれから研究するとのことです。
 松下さんは「これだけの設備をしても、一般の豚舎が豚一頭当たり6万円。内排水の浄化設備分が1万円。ここは5万円だから返って安い。浄化設備のランニングコストもかからない」と言います。「いずれ落ち着いたら、地域の反対運動をしていた人たちを招待して、豚肉をたらふく食べてもらいたいです」と楽しそうに語っていました。

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